税界展望

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DX(Digital Transformation)

(第565号掲載)

DXとは、「企業等がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、ピロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。」(2018.12月経済産業省DX推進ガイドライン) つまりICTの活用を通じでビジネスモデルや組織を変革することである。新型コロナウイルス感染症拡大によりデジタル化への課題が浮き彫りとなった。税理士業務関係では、関与先を含めテレワーク、在宅勤務の増加・Web会議の増加による環境整備の問題。行政の給付金・助成金等支援策に係るオンライン申請の拡大、そのオンライン手続の不具合等のデジタル化の遅れが表面化した。

 国税庁2020.10月の「税務行政の現状と課題」で、新型コロナウイルス感染症に関する取組として、所得税等・法人税・相続税の申告期限、納付期限の延長・個別の延長や納税が困難な者に対する納税猶予の柔軟に適用。税務行政の将来像(税務行政のデジタルトランスフォーメーションについては、①税務行政のデジタル化として、スマートフォンやタブレットを利用した確定申告によるe-Taxの推進。②マイナーポータルの活用による年末調整・確定申告の簡素化。
③税に関する質問をフリーワードなどで入力するとAI(人工知能)を活用して自動的に回答を表示するチャットボットによる税務相談。④課税・徴収の効率化・高度化に向けた基幹システムの刷新(次世代システムの構築)⑤税務上の書面規制については、オンライン利用の円滑化のため様式の簡素化や添付書類削減、オンライン化(電子メールでの提出や簡易な申請ウェブサイトによるオンライン提出を含む)を推進する。⑥押印原則については、押印を求める行政手続等について押印の必要性を検証し、真に必要な場合を除き、押印を廃止。押印を残す場合にも、電子的に代替できる方策を明確にする。令和3年度の税制改正により、令和3年4月1日以降の別途掲げるもの以外押印を要しないこととなった。⑦対面手続については、デジタル技術を活用したオンライン対応を検討する。

 上記のようにICTの活用による課税・徴収の効率化・高度化を柱とする「スマート税務行政」の取組は着実に進んでおり、新型コロナウイルス感染症の影響もあり今後その動きは加速されると思われる。最近の税務署から税理士に対する連絡依頼事項は次のとおり。①書面添付制度の普及に向けた周知協力。②東京国税局では、内部事務の効率化・高度化を図るとともに、調査・徴収事務の充実・高度化を目指し「税務署事務処理センター」を設置し、複数の税務署(対象者)の内部事務を集約処理する「内部事務のセンター化」実施についての周知。③e-Taxを使いインターネットで納税証明書の請求→PDFファイルで受取→自分で印刷(令和3年7月から)の利用依頼。④ダイレクト納付、振替納税、インタ-ネットバンキング口座からの納付、クレジットカード納付等による「キャッシュレス納付」の利用案内。④スマートフォンやタブレットからの所得税徴収高計算書(納付書)の提出。⑤令和3年10月1日からの適格請求書発行事業者(登録事業者)のe-Taxでの申請依頼。

 令和3年度の税制改正において、各税法原則紙での保存が義務づけられている帳簿書類について一定の要件を満たした上で電磁的記録(電子データ)による保存を可能とすること及び電子的に授受した取引情報の保存義務等を定めた「電子帳簿保存法」の改正が行われた。(令和4年1月1日施行)電子帳簿保存法上は、イ.自己が作成する帳簿・決算関係書類・請求書等の保存「電子帳簿保存」ロ.取引相手等から受け取る書類等の保存「スキャナ保存」ハ.電子取引の取引情報等のデータ保存「電子取引データ保存」の類型がある。改正ではイとロにおいて税務署署長の事前承認制度の廃止・優良な電子帳簿の場合の過少申告加算税5%軽減。ロとハにおいてタイムスタンプ要件、検索要件の緩和等がされた。今後電子帳簿保存法を利用する事業者等も増加すると思われる。

 税理士は、DXの加速による税務行政等の変化に、適確に対応して、税理士業務を行わなければならない。

『展望』 Newest article

税務相談は時代を移す鏡である

(第561号掲載

税務相談は時代を移す鏡である、というのは言い過ぎだろうか。

 今年も東京国税局が設置する確定申告電話相談センターでの相談業務に従事している。東京国税局管内の個人から寄せられる所得税、消費税、贈与税に関する質問に回答する。1月の中旬から執筆時点までに300件以上の相談に対応して感じたことを共有したい。

 サラリーマンの確定申告の二大事由である医療費控除と住宅ローン控除の相談が多いのは例年どおりである。医療費控除では介護関連の相談が比較的多い。新型コロナウイルスへの感染を危惧した受診控え等から医療費全体の支出は減る一方で、介護関連の支出は減らず、結果として浮かび上がったと考えられる。住宅ローン控除では、中古住宅と増改築の相談が増えた。緊急事態宣言下で在宅ワーク等が浸透し、独立したワークスペースなどを備えた新たな住宅需要が喚起されたのかも知れない。

 高齢の中途退職者からの相談も目立つ。定年退職者だけではなく、継続雇用と思しき年齢の人からの相談も多い。年金受給者であることから一定の生活保障があるため、コスト削減の調整弁となったかたちであろうか。

副業の相談も増えた。Uber Eatsを始めた人の相談は特に多い。話を聞く限り、全く儲かっていない。儲けているのは低コストでテイクアウトを始められる飲食店とUberなどの仲介者だ。その皺寄せ一身に受け止めているのが個人事業主である配達員である。個人事業主であることをいいことに最低時給以下の条件で働いている。ワーキングプアの温床と言っていい。

その一方で、給与収入が1,500万円~2,500万円という人からの相談も増えた。試しに国税庁の「民間給与実態統計調査(平成元年分)」を覗いてみると、果たしてこの層の給与所得者は年々増えていることが確認できる。日本の伝統的富裕層と言えば、地主と医師と企業経営者であるが、サラリーマンでも富裕層の仲間入りができる環境が整ってきた。アフターコロナの財政健全化において、経済の活性化に貢献してもらえると有難い。

 今年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で税理士による無料相談の多くが中止となった。税務署の確定申告作成会場も当日に入場整理券を配布する方式や対話アプリLINEで予約する方式を採っているが、遠方に住んでいたり、スマートフォンを持っていない高齢者にとっては酷であり、多くの申告難民が発生すると思われる。計らずも申告納税方式がどうあるべきか、もう一度考え直す良い機会になるのではないだろうか。春の来ない冬はない。その日に向けて、知恵を蓄えておきたい。

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「まち歩き」の記 ・・・その5

渋谷支部  倉林倭男

(第560号掲載)

 冷たい風が吹き始めた週末に、赤羽駅にいつものメンバーが集合して久し振りのミニ「まち歩き」を行いました。良い天気のなか、まず王子駅行きのバスでナショナルトレーニングセンター(NTC)へ移動して、NTCイーストを見学。東京オリンピックを目指すアスリートのトレーニング拠点として昨年供用された施設です。二班にわかれ女性ガイドさんの案内で見学開始となりました。まず4階のスピード体感コーナーへ。長い廊下の壁面にトップアスリートの走る姿が映され、その凄まじい速さに驚かされる。3階はフェンシングの専用施設、太田選手の競技ウェアなどの展示コーナーもありました。2回に移動してパラリンピック競技の紹介、医科学展示などを見てから、競泳用プールを見学。その後6階の射撃とアーチェリーの施設へ行き、競技用の銃などを手に取って楽しませてもらいました。最後に卓球場で若い選手たちの練習の様子を見学しました。

 表へ出て、通りを渡ったところの稲付西山公園に、アスリートの手形モニュメントがあり、体操の内村選手や卓球の張本選手の手形を見つけました。

 近くの国立西が丘サッカー場脇を通って赤羽自然観察園へと向かいました。ここは旧自衛隊十条駐屯地の一部で、谷状の地形や湧水を生かして「自然とのふれあい」をテーマに公園として整備されたものです。中に北区有形文化財の旧松澤家住宅を移築した体験学習施設があります。この建物はかつて浮間地区にあったもので、水害対策として軒下に小舟が吊るされていたと紹介されています。ここで記念写真の撮影をしていると閉園のアナウンスがあったので、自然観察園をあとにして本蓮沼駅へとしばらくまち歩きです。

 本蓮沼駅から地下鉄で巣鴨駅に向かい、コロナ感染防止に配慮しながら、希望者でお約束の懇親会をささやかに行いました。


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