会長挨拶

専税協議会の意義

専税協議会会長  菊池 純

税理士会の意義 = 専税協議会の意義
会長 菊池純
税理士業務を行うためには、税理士としての資格を有する者が、登録を受け、その登録を受けた税理士事務所又は税理士法人の所在地を含む区域に設立されている税理士会の会員にならなければなりません。この登録即入会方式の直接強制加入制は、税理士が納税義務者の信頼を得て、その資質の向上を図っていくために採られています。すると税理士会は、税理士の使命を達成させるための組織であることが必要だと考えます。
私たちは、国民のための税理士制度、国民のための租税制度を次のように考え、実現するために活動しています。
 

1.税理士はどのようなスタンスで仕事をするべきでしょうか。

税理士はもとより税務行政の補助機関であってはなりません。まさにクライアントである納税者の代理人として課税庁と対決する立場に立って法によって保障される納税者の権利・利益を擁護しながら納税義務の履行に協力する職業専門家であると考えます。

2.それでは、このような税理士の使命が納税者にいきわたっているでしょうか。

私はまだまだ、いきわたっていないと思います。その理由は次の2点と考えています。

(1)税理士法における理由

① 税理士の使命に納税者の権利擁護を明文化する必要があります。

税理士法は、第1条において、税理士の使命を「税理士は税務に関する専門家として、独立した公正な立場において、申告納税制度の理念にそって、納税義務者の信頼にこたえ、租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図ることを使命とする。」と規定しています。

しかし、同条の「独立した公正な立場」を、納税義務者、税務当局のいずれにも偏しない、裁判官のような役割と考えている税理士もいるのです。

この「公正な立場」の法的意味を北野弘久先生は「課税庁とは距離を置いて、かつ、納税者の代理人としての職業専門家の立場と解すべきである。税理士は、納税者の代理人として課税庁の誤った通達や行政指導等を批判しなければならない。」としています。

そこで、第1条を「税理士は、納税者の権利を擁護し、法律に定められた納税義務の適正な実現をはかる」ことを「税理士の使命」として宣言的に規定して、税理士制度の本質を明確にすることが強く要請されます。

② 税理士一人ひとりが税制に対して意見を言っていく使命があります。

税理士法では、「税理士会は、税務行政その他租税又は税理士に関する制度について、権限のある官公署に建議し、又はその諮問に答申することができる。」として、税理士会の建議、答申について規定しています。

しかし税理士会のみならず、税理士一人ひとりは、租税制度全般にわたって国民の権利を擁護すべき立場なので、租税制度の維持ならびにその進歩改善に努力しなければならないと考えます。

つまり、税の専門家である税理士は、国民のための税制の確立を求めていくために、「税理士は、租税制度の改善に努力しなければならない。」を税理士の使命に加えて規定することが必要だと思います。

(2)先進国で納税者権利憲章がないのは日本だけという理由

「あなたは、記帳・申告等納税協力義務を履行していない場合か、具体的な租税脱漏の疑い等がない限り、誠実な納税者であり、あなたが提出した納税資料は、真実なものと推定されます。」これは韓国の納税者権利憲章の最初の文章です。

納税者の権利は、基本的人権の尊重、国民主権、平和主義を基本原理とする日本国憲法から当然に導き出される権利です。すべての納税者に、納税者の権利が保障され、税務職員にはこれを最大限に尊重することが求められます。

ところが、OECD加盟国の中で、納税者権利憲章や納税者権利保護法がないのは日本だけなのです。

日本に納税者権利憲章の制定と実効性を確保する法的な整備をすることで、納税者に権利があることを国民に知らしめる必要があると思います。

3.税理士が発信すべき国民のための税制の確立とはどのようなものでしょうか。

憲法は、一人ひとりの国民が幸福を追求するには、負担が平等になる税制でなくてはならないと考え、あらゆる税金や社会保険料は「応能負担原則」によることを要請しています。

税の応能負担原則というのは、所得に応じて税を納めることをいいます。すなわち所得の多い人ほど多くの税金を払うことが、むしろ公平、平等な負担になるという考え方です。

このように憲法は税の決め方、すなわち租税法律主義を要請するだけではなく、税制の基本方針(応能負担原則)を示しているのです。

応能負担原則の税制をさらに具体化すると、直接税を中心にして、累進課税であること、勤労所得課税を軽くし、資産所得課税を重くすること、生計、生活費にかかる分については、できるだけ非課税にしていくこと等です。

私たち税理士は、このような税制の確立を求めていく使命も持っていると思います。

以上のことを踏まえて、税理士制度を愛し、「税理士の使命」を職責・理念として業務上実践する税理士を増やすことが税理士会の意義であり、専税協議会の意義でもあります。

4.今の税理士会は税理士の使命を達成する方向に向いていますか。

残念ながら、税理士の使命論等を含む税理士制度の発展につながる議論を俎上に載せることを避け、行政側にとって喜ばれる税務援助の拡充、租税教育の拡充、成年後見制度の拡充、マイナンバー制度の行政の手伝い等に積極的に協力しました。

すべてが税理士会の責任とは言えませんが、行政側に手を貸したことは確かです。これでは会員無視、税理士の立場を無視した会務運営としか思われません。

このように、今まで青税、専税、新人会等の民主的団体の先輩諸氏達が培ってきた税理士制度発展の理念が失われようとしています。

税制改正でも、軽減税率反対、インボイス制度導入反対をとなえても、消費税率アップには賛成なので、応能負担原則に則っていないし、アップできるのは転嫁ができるという前提に立っているのであれば、国民の実情に目を向けていないと言わざるを得ません。

この状況を打開するために、納税者・国民の立場に立った民主的な税理士制度、租税制度等の確立、会員のための会務運営に根ざした主張をし続ける必要があります。

税理士会に本来の形を取り戻させるための提言をする、これが専税協議会の大きな意義であり、役員選挙をやることの意義にもつながっていると思います。