二転三転するインボイス制度の説明、どうしていますか?

 2023年02月03日

(第580号掲載)

 請求書の適格請求書等保存方式(以下「インボイス制度」と呼ぶ。)に関する説明を顧問先にすると、想像以上にたくさんの質問を投げかけられ戸惑うことがしばしばある。税制というよりも、まずは顧問先の請求書発行処理を知ることから始まる。請求書の消費税端数処理をどうしているか、請求書作成は1回の取引ごとか、1か月分をまとめてなのか、これが今回のインボイス制度にはとても大事な点である。こうしてインボイス制度の説明には結構な時間を割いてきた。ということで、前号に引き続きで恐縮ではあるが、今月号もインボイス制度について書くことにしたのだが、実は一か月前の「論」に掲載するつもりで一度書きあげた文章を、12月中旬に公表された税制改正大綱により、違う論点が加わり改めて書き直す羽目となった。繁忙期の最中、インボイスに振り回されている。

 インボイス制度の導入に個人的には今も反対である。昨年末にインボイス制度の冊子を事務所名入りで大量に作成したものの、心のどこかで今年7月の選挙で大きな変動があればインボイス制度も見送られるかもという淡い期待もあり、作った冊子は長い間、段ボール箱にしまったままだった。しかし、選挙も終わりインボイス制度見送りの期待感が消えた頃から、顧問先からインボイスに関する質問が次々と届くようになった。当初、質問の多くは「取引先からインボイス登録申請状況確認書が届きましたがウチはどうしたらいいのでしょうか?」というシンプルな問い合わせであり、その多くはすでに課税事業者だったので、いずれ出すべきものなので早めに出しましょう、御社からも取引業者確認をしましょうと話して登録申請作業を順次進めていた。

 そうこうするうちに、免税事業者からの問い合わせが増え始め、こちらの説明の大変さが加わった。私の事務所は不動産賃貸業を個人で営む事業者が多く、彼らは事業的規模はあっても居住者向けが大半であり消費税は免税という事業者も多いのだが、マンション1階のテナントに事業者が入居している場合はインボイスを求めてくることが十分予想される。その時に貸主が免税事業者なのでインボイスを発行できないと言った場合に相手から消費税分を値引き交渉されることも想定されるため、その場合の消費税分の減収額と、あえて課税事業者となり簡易課税を選択した場合の消費税納税額を計算し、両者を具体的な数字で比較して説明して選んでもらう二択性をとり説明を進めていた。ところがここにきて、小規模事業者に係る税額控除に関する2割特例という経過措置案が税制改正にて公表されたことにより、「免税のまま」か「簡易課税」か「2割特例」かの3択となるのは確実となり、顧問先への説明方針を変えることとなった。いっそなにも説明しなければよかったと思う今日この頃である。

 話は変わり、ある顧問先がPeppol(ペポル)というユーロを中心とした標準化規格を日本のデジタルインボイスの標準仕様にする仕組みづくりに関わっており、その会社から受ける質問は、即答できない細かい質問が続き非常に苦戦している。システム開発会社からすれば税理士ならばインボイスに通じていると思うのも無理ないが、それは税の話ではないという質問もあり、国税庁のインボイスに関する相談窓口フリーダイヤルへ聞いて解決して欲しいと言ったのだが、どうも回答してくれないらしい。私も試しにトライしてみたが、個別具体的な質問にはお答えできませんとのことだった。私の悩みはどうやら年を越して持ち越しそうである。

皆さん、インボイスの説明はどうしていますか?