インボイス登録申請間に合うのか

 2023年08月07日

(第585号掲載)

 インボイス制度開始まで4か月を切った。現在登録申請者数は伸びていないと聞いているが果たして10月1日までで間に合うのだろうか。今後3ヶ月間はまず顧問先の会社の経理が10月1日以降どのように経理処理していく必要があるのか丁寧に説明をしていく必要があり、1社ごとに時間を取っていくものの非常に膨大な時間がかかり途方に暮れている。

 コロナ禍で対面することができなかった顧問先とも徐々に対面する機会が増えたため、この時期にインボイス導入後の処理も含めじっくり話をする機会にしたいとも考えている。併せてインボイス導入に伴うチェック時間の増加により顧問報酬の値上げをどうするか考えることも多くなってきて、同業の税理士から顧問契約書の内容変更や値上げの交渉方法などの情報収集も行っていきたいと考えている。

 一番頭を悩ませるのは顧問先の取引先へのインボイス番号の取得状況が進んでいないことである。経理体制がしっかりしている企業はいいが、零細企業で経理担当者が一人で回しているところ、外注先が多いところなどは手が回っていない企業が多い。この部分は顧問税理士かしっかりと進捗状況を管理してあげないと結局のところ10月1日以降インボイス番号を取得している外注先とそうでない外注先の区別に時間がかかり、かつ経過措置の処理を行っていくことの説明をしなければならないので、ここでも膨大な時間が説明に取られてしまう。

 会計ソフトはすでにインボイス対応が終了しているので入力画面見ると区分記載の個所には100%、80%、50%、控除不可との選択が出てくる。インボイスの説明だけでも大変なのだが経過措置の説明まで含めるとまだ理解できている人は少ないだろう。

 その他にも税制改正での1億円以下の会社の1万円未満のインボイス不要などの少額特例、不動産賃貸借契約書やリース契約の改定、スイカなどの電子決済の処理、タクシーの処理など顧問先へ説明しなければならない項目はたくさんある。オフコンメーカーの担当者などは会計事務所を回ってインボイス対応のシステム説明などを丁寧に行ってくれるが、PCソフトやクラウド会計などはホームページを見て自分で勉強してください。というスタンスなので結局税理士事務所は顧問先ごとに自計化先と記帳代行先によってそれぞれ領収書の整理(電子帳簿保存法も含め)から再度説明していかなければならない。

 インボイス制度を分かりやすくという小冊子を購入して顧問先に配ろうと思ったが、おそらく熟読してくれる人は少ないだろう。また免税事業者でインボイス制度の説明をYouTubeで見て勉強してくださいと言っても見てくれないだろう。事務所の発行物で1年以上にわたってインボイスのことを説明してきているが、顧問先では「難しそうなので読んでないんですよ。分からないことがあったら都度質問します。」と恐縮するように言われてしまうが、最近やはりインボイスに関しての質問が徐々に増えてきていて、毎度同じ説明を繰り返している。とにかく面倒くさいのである。

 最近テレビのCMで電子帳簿保存及びインボイス対応の放映が増えたが、実際にテレビCMを見ている人は少ない。もっと国税はインボイスに対しての周知を政府広報としてテレビCMとして流してもらえないだろうか。もしくは報道機関がニュースでインボイス制度のことについてゴールデンタイムで話してくれないだろうか。あまりにも企業が他人事のように考えていて困ったら税理士が何とかしてくれるだろうと思っている。

 不動産の賃借にともなう管理費や修繕積立金、任意の集まりでの懇親会費、毎月の駐車場代、おそらく支払った先がインボイス登録を行っていない(今後も行わないだろう)ところはたくさん存在する。これらの消費税処理は会計データを見ただけでは絶対に確認できず結局全部請求書などの原始帳票に当たらなければならない。これらすべてを税理士事務所がチェックするというのは難しいので結局各顧問先がしっかりとインボイス制度を理解して会計処理を進めていってもらわなければならない。税務調査で税額控除ができなかった際の損害賠償(実際には損害賠償といった大きな話ではなく延滞税と加算税の負担)などの件も事前にお互いで確認しておく必要もある。

 居住用不動産の購入に伴う消費税処理や転売不動産の消費税処理、控除対象外消費税の法人税の処理など消費税があるがためにミスが生じた場合には多額の加算税や延滞税が発生する。そもそも消費税処理などはミスにより生ずるものなので誰も間違えたくて間違っているわけではない。消費税に関してはかなりの簡素化を行って欲しいし、税制改正での要望も行って欲しいと思う。