~機関決定を経る前に、ホームページ、広報誌で方針変更を発表~

 2022年12月09日

日税連理事会傍聴報告  新宿支部 菊池 純

(第576号掲載)

 令和4年6月29日シェラトン都ホテルB1「醍醐」で日本税理士会連合会(以下「日税連」という。)第1回理事会が開催された。

 議決事項 一 第66回定期総会提出議案 二 第66回定期総会の招集日時及び場所 三 令和5年度税制改正に関する建議書(案)はすべて賛成多数で可決された。

 本報告は、議決事項の「令和5年度税制改正に関する建議書(案)」の重要建議項目中、適格請求書保存方式の導入についてと、それに関連する報告事項 4 インボイス制度の円滑な導入・実施について絞って報告する。

1.方針変更手続きの経過

①日税連ホームページ

 日税連は令和4年5月26日ホームページにおいて「インボイス制度の円滑な導入・実施について」を発表、令和3年6月23日公表の令和4年度税制改正に関する建議書で「インボイス方式を見直すとともに、その導入時期を延期すること。」としていた方針を変更した。

 突然の発表であり、どこでどのようにして決まったか、何のコメントもない。

②日税連機関紙「税理士界」

 日税連の機関紙税理士界(6月15日号№.1413)では、「インボイス制度の円滑な導入・実施に係る提案」として、インボイス制度の実施を踏まえた柔軟な運用に係る、日税連としての提案事項が掲載された。何月何日どこでこのような決定がされたのかはわからないが、日税連ホームページとの関係で、5月26日第2回正副会長会において、と推測する。

 この記事によると、同提案は6月2日に開催された自民党税理士制度改革推進議員連盟(会長:宮沢洋一参議院議員、幹事長:西田昌司参議院議員)の第2回インボイス勉強会(発足は昨年11月西田議員の提案による)で報告され、同勉強会には、自民党議員のほか関係省庁の担当官も出席してたとして、出席議員全員が賛意を示し宮沢会長も前向きに検討すると約した旨が書かれ、年末の税制改正大綱に向け要望を強めていくとしている

③日税連建議書

 6月29日第1回日税連理事会において建議書案が審議され、議決された。

 建議書の重要な変更点は、令和5年度税制改正に関する建議書(案)の重要建議項目1.に「適格請求書等保存方式の導入時期を延期するか、少なくとも中小企業者の実務を踏まえた柔軟な運用を行うこと。」とされ、前年までの建議書内容に太字部分が加筆された。

 また、報告事項の4 インボイス制度の円滑な導入・実施について(令和4年5月26日付)では、これは建議書案に沿って提案したとの説明があった。

2. 批判的見解

建議書案が日税連理事会で可決される前に、建議書に沿った提案を日税連ホームページ及び日税連機関紙で発表した。

 さらに、前年の建議書で「見直し、延期」としていた内容を、「円滑な導入・実施」と180度舵を切ったもので、手続きとともに到底承知できない。

 各単位会の意見書は税理士会員の意見の結晶である。日税連が何と言おうが各単位会の意見書は生きている筈である。

 少なくとも東京会はインボイス制度導入反対の意見を維持している。東京会の公式見解はずっとインボイス制度導入反対である。

 税の専門家である税理士は、インボイス制度は導入しなければならない理由が存在しない中で、多くの負担を招くだけの制度を導入すべきでないから反対してきたはずである

 インボイス制度の問題点が何も解決しない中、国民のためにならないとわかっていて円滑な導入など提案したら、納税者の権利を擁護するという使命を掲げる税理士会は、納税者からの信頼を失うことになる。