「論」中小零細事業者は消費増税に耐えられるのか!

(税界展望 第532号)2018年(平成30年)4月11日

1.税理士会の意見

東京税理士会から会報(東京税理界NO.735)とともに「平成31年度税制及び税務行政の改正に関する意見書」が届きました。重要な改正要望事項として消費税について「消費税の軽減税率に反対する」と「適格性請求書等保存方式の導入に反対する」が記載されていますが、消費増税については触れていません。消費増税については反対することなく、容認しています。これは日本税理士会連合会も同じく昨年6月22日に開催された理事会で決定した平成30年度税制に関する建議書では消費税については税率引上げを容認し、「今後の税制改正についての基本的な考え方」として「消費税は我が国の基幹税であり、これからの我が国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるのは、消費税である。消費税率の引上げによる国内消費の減速懸念の問題については慎重な対策が必要であるが、消費税率は予定どおり引き上げられることが望ましい。」としています。しかし前回の消費税引上げが個人消費に与えた影響や税率引上げによる物価上昇による影響は小さくありません。消費税率を引上げなければ中小零細事業者が負担する軽減税率(複数税率)制度の導入は必要ありません。

2.経済財政諮問会議の課題

先の総選挙において連立与党の圧勝を受けて、消費増税は民意を得たと言うことができるというかもしれません。しかし改めて消費増税についてはたして中小零細事業者は負担に耐えられるのでしょうか。平成30年2月20日の経済財政諮問会議の今年前半の主な課題・取組について、「来年10月の消費税率引上げの影響に対する予算を含めた万全の対応」を挙げています。首相は「平成26年の消費税率引き上げ時の経験に鑑み、欧州の事例にも学びつつ消費税率引き上げによる駆け込み需要と反動減といった経済の振れをコントロール、需要変動を平等化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある。」と述べています。消費税率引き上げに伴う経済の落ち込みはどの程度になり、また政策的にどう対応するか課題となって、消費増税についての議論は、消費税率の引き上げの前に価格を引き上げるべきという意見が出ています。しかし税理士、税理士法人の主な顧客である中小零細事業者は自社の都合で価格を引き上げることができる商品、製品やサービスを通常は持ち合わせていません。

3.消費税の導入の歴史

消費税の歴史を再確認してみると、日本では消費税は社会保障の捻出や財政再建のためなどと言われていますが、消費税(付加価値税)はフランス政府が1954年に国内の輸出企業にリベート(還付金)を渡すために編み出した税制で、GATT(関税貿易一般協定・貿易WTOの前身)の例外規定として認めさせてきた歴史を持ちます。先月(第531号税界展望「論」の通り、先進諸国で消費税を採用していないのは米国だけで、米国には小売売上税はありますが、これは州税で、消費税とは全く異なる税制です。消費税には輸出企業へのリベート機能はありますが、小売売上税にはありません。日本の消費税が輸出企業へのリベートであることは導入以降の歴史が証明しています。消費増税は消費を後退させ中小零細事業者の負担は重たくなります。

4.消費増税は凍結に

経済財政諮問会議では「前回の消費税引上げが個人消費に与えた影響は、税率引上げによる物価上昇を通じた影響は2兆円台半ば程度、駆込み需要の反動による下押しは3兆円程度(平成27年度経済財政白書)。また、デフレマインドが残る中での名目賃金の伸び 悩みも消費を下押しした。物価上昇に伴う実質所得減の影響、税率引上げ前後に生じる駆込み需要とその反動に留意する必要がある」としています。

一説では会社が設立されてから10年後の生存率が6.3%といわれています。消費の停滞を脱し切れずにいるあいだは消費税率10%への引上げを凍結し、税率をもとの5%に戻すぐらいの英断が国民の消費を増やし中小零細事業者に元気を与え、経済は活性化するのではないでしょうか。

(研修)「民事信託入門(自社株承継編)と緩和される事業承継税制」

/平成30年4月4日(水):於東京税理士会館

第1部「民事信託入門(自社株承継編)」玉川支部 菊地和仁
第2部「大幅に緩和された事業承継税制」について 本所支部 宮本雄司

 

第1部「民事信託入門(自社株承継編)」研修会講師を務めて 玉川支部 菊地和仁

今、ある種ブームとなりつつある民事信託について講師を務めさせていただいた。事前に昨年7月、徳田会長の事務所にて芥川副会長を講師として、第1回民事信託研究会を行いその後、9月に同じく徳田会長の事務所において、私が講師を務めさせていただき、第2回の民事信託研究会を行った。研究成果、参加者との意見交換を踏まえて、民事信託の中で特に自社株承継に絞って会員向けに研修会を行ってはどうか?ということになり、研修会を開くこととなった。民事信託は新しい分野であり、信託の複層化など税務的に評価の定まっていない分野については紹介するにとどめ、民事信託の基本を理解していただき、自社株承継の利用事例を中心とした研修会をすることとした。

実際の研修会で話をさせていただいことの中で、信託のごく基本的なことについて記載をしておきたい。

〇信託の基本

登場人物などと言う言い方をされるが、信託の話をする場合、委託者、受託者、受益者という三者が最低限登場人物として出てくる。

第1登場人物『委託者』 委託者とは財産を持っている人・預ける人。少し難しい言い方をすれば、財産を受託者に移転し、信託目的に従い受益者のために受託者にその財産の管理・処分などをさせる者ということになる。

第2登場人物『受託者』 受託者とは財産を管理する人・預かる人。少し難しい言い方をすると、委託者から信託財産の移転を受け、信託目的に従って受益者のために信託財産の管理・処分などをする者ということになる。

第3登場人物『受益者』 受益者とは利益を享受する人、預けられた財産から利益を得る人。少し難しい言い方をすると、受託者から信託行為に基づいて信託利益の給付を受ける権利と、このような権利を確保するため、受託者に対して信託違反行為の差止請求をする権利などを有する者をいうことになる。

最低限の登場人物が揃ったところで、そもそも信託とはどのように制度か?信託とは、委託者信託行為(例えば、信託契約、遺言)によってその信頼できる人(受託者)に対して、株式や土地などの財産を移転し、受託者は委託者が設定した信託目的に従って受益者のためにその財産(信託財産)の管理・処分などをする制度、と意義付けることができる。

〇信託の課税関係

信託における課税関係についても触れておきたい。『受益者課税を原則とする。』まずこの言葉を覚えておいていただきたい。信託をすると信託された財産の所有権は、委託者から受託者へ移転する。信託財産の所有権は受託者が有することになるが、課税上は、原則として受益者が信託財産を有するものと考える。つまり受益者課税となる。例外として、受益証券を発行する信託 受益者がいない、いなくなってしまった信託は法人課税信託となり、受託者を法人とみなし信託財産から生じる所得を申告する必要が生じる。注意が必要である。信託が終了する場合の課税関係は、財産が実質的に移転しているかどうかで考える。

〇信託財産の評価

信託財産の評価についても触れておきたい、元本と収益との受益者が同一人である場合は、相続税財産基本通達の定めるところにより評価した課税時期における信託財産の価額によって評価する。元本の受益者と収益の受益者とが異なる場合、これを信託財産の複層化と言う。信託を少し勉強すると必ずぶち当たる問題がある。それは複層化した信託をいかに評価すべきかという問題である・・・。

複層化信託の評価についての文言はごく簡単である、

・収益受益権(信託財産の管理及び運用によって生ずる利益を受ける権利)の評価・・・将来収益受益権者が受け取る各年の利益の額を現在価値に割り戻した金額の合計額。

・元本受益権(信託財産自体を受ける権利)の評価・・・『信託財産の評価額-収益受益権の評価額』となる。

将来収益を見積もるのが厄介であるがゆえにこの複層化した信託の評価の難しさがある。

〇信託の利用

さて、信託の利用方法についても触れておきたい。実際の研修会では信託組成の事例紹介に大きな時間を割き、具体的な文章事例に表をプラスしてまとめ話をさていただいた。以下に、信託の利用例ついて記載する。信託の多様性について、そんなことが考えられるんだ、と雰囲気が伝われば幸いである。

・信託を利用すると、遺言の欠点を補うことができる。

・信託を利用すると、子・孫の代以降30年先まで受益者等を指定することができる。

・信託を利用すると、会社の経営権を確保した上で株式を贈与することができる。

・信託を利用すると、成年後見制度と類似の効果を生むことができる。

・信託を利用すると、後戻りできるM&Aに利用することできる。など、など

信託には様々な利用方法が考えられ、『信託は想像である!』と言う専門家もいる。今後も研究を続けて機会があればまた報告をしたいと思っている。

 

第2部「大幅に緩和された事業承継税制」について 本所支部 宮本雄司

 

平成30年4月4日(水)、東京税理士会館に於いて参加者多数の中、盛大に開催された研修会の一部を抜粋し、「大幅に緩和された事業承継税制」について以下記述する。

平成30年度税制改正の中でも目玉とされている事業承継税制について

1.ここ数年における改正点の確認

2.今回の平成30年度改正の主な内容

3.新制度を使う場合の手続的な注意点

4.クライアントへいかに提案を行うべきか

5.補助金制度について

といった内容の研修会であった(講師:宮本雄司)。当日は多くの税理士会員が集まり、会場は熱気を帯びていた。

1.事業承継税制・主な改正の経緯

 

平成21年度改正で創設された事業承継税制は、その後平成25年度改正(親族外承継の適用可、雇用8割維持要件の緩和などがあり、施行時期は平成27年)、平成27年度改正(贈与税の納税猶予・免除制度の拡充)、直近では平成29年度改正(相続時精算課税制度との併用解禁など)として幾度となく見直しが行われてきた。

こうした改正が重ねられてきた背景として、ここ20年の間に中小企業の経営者の高齢化が進み、しかも後継者が未定とされている企業が多いとされる。このままでは中小企業の廃業が増加してしまい、日本経済を底辺で支える中小企業の技術やノウハウが途絶えてしまう危険性がある。

それに対する対応がまさに緊急を要しており、そのための対策が平成30年度の事業承継税制の改正の大きな特徴である。

2.平成30年度事業承継税制・改正の内容

(1)対象株式について

相続税・贈与税ともに、事業承継税制の対象となる株式は、その法人の発行済株式総数の3分の2が限度であったが、今回の改正でその発行済株式総数の全株数が対象となった。

(2)納税猶予の対象となる評価額

相続税においては、納税猶予の適用対象となるのは、その評価額(課税価格)の80%相当の金額に対応する相続税額だったが、今回の改正で課税価格の100%、つまり評価額の全部について、その対応する相続税が納税猶予の対象となった。)(措法70条の7の6参照)

(3)承継パターンの拡充

これまでは、相続又は贈与による事業承継は、1人の先代経営者から1人の後継者への承継というパターンのみであったが、今回の改正により親族外を含む複数の株主から、代表者である後継者(最大3人)への承継について、納税猶予・免除制度の適用が可能となった。(「措法70条の7の5参照」

(4)雇用確保要件の実質撤廃

贈与又は相続が発生してから5年間(事業承継期間)で平均の従業員数が80%を下回った場合は、納税猶予が取消となり、猶予されていた税金を納付しなければならないとされていたが、今回の改正でこの要件が実質的に撤廃された。

(5)経営環境の変化に応じた減免制度

事業承継後に、廃業を余儀なくされた場合や事業を売却することとなった場合において、その廃業時又は売却時の株価を基に納税額を再計算し、事業承継時に計算された納税額との差額が減免されることとなった。

(6)相続時精算課税制度の適用範囲の拡大

従来、相続時精算課税制度は、60歳以上の父母や祖父母から、その推定相続人や孫への贈与が想定されていたが、今回の改正により、受贈者側の対象者を推定相続人や孫以外の第三者にも広げることとなった。(措法70条の2の7参照)

また、これらの改正は、平成30年1月1日から平成39年12月31日までの間の贈与等により取得する財産に係る贈与税又は相続税について適用する。

 

3.手続的な注意点について

今回の特例制度の適用を受けるためには、平成30年4月1日から平成35年3月31日までの間に、都道府県に対し、「特例承継計画」を提出することが出発点となる。なお、この「特例承継計画」は認定経営革新等支援機関の指導・助言のあるものでないと提出ができない。

実際の株式の贈与があった場合、その贈与日の翌年1月15日までに都道府県に対して認定申請を行い、同年3月15日を提出期限とする贈与税の期限内申告書には、その申請後に都道府県から交付される認定書類を添付する必要がある。

その贈与税の期限内申告書の提出期限の翌日から5年間は「経営承継期間」と呼ばれ、この5年間は毎年一定の時期に、都道府県と税務署に対して、事業継続等についての報告が義務付けられる。

相続税についても同様の手続きを必要とする。

 

4.クライアントへいかに提案すべきか

まず、この特例制度に適している会社を見極める必要がある。具体的には、意欲と責任のある後継者が確定している会社、黒字基調で財政状態がよい会社、今後業績が右肩上がりとなり株価上昇が予想される会社等が適していると考えられる。そしてこうした会社には、まず提出期限が定められている「特例承継計画」の早めの提出が必要であることをアドバイスする必要がある。

また、株式を引き継ぐ後継者には、事前に役員登記されている必要があるなどの要件があるため、注意が必要である。

そして、この特例制度を適用するにあたっては、生前贈与からスタートするべきだと考える。理由としては、贈与税の納税猶予に相続時精算課税制度の併用が認められたこと、特例制度の適用を受けて、「経営承継期間」に入った後に取消事由によって納税を余儀なくされた場合に、納税額を相続時精算課税制度との併用とすることで、納税額を少なく抑えられる効果があるということが挙げられる。

生前贈与、つまり先代経営者が存命中に対策を講じておくことが、後に税負担が発生した場合を考慮すると望ましい。いずれにしても、今回の平成30年度改正は大変大きな改正であり、中小企業にとって将来の納税不安を大幅に軽減するものとして、是非活用して頂きたいと考える。

またクライアントへの提案をする上では、遺留分という問題にも留意しなければならない。承継者が、承継者ではない他の相続人から遺留分の財産返還を求められた場合、自社株が分散し、不安定な状態となりかねない。そのための事前策についても考えておかなければならない。例えば、こうしたリスクを回避するため、遺留分に係る民法の特例についても検討する必要がある(中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律第三条~第十条)。

 

5.補助金制度について

平成29年度に創設された事業承継補助金については、今年度は2億円から30億円に増額された。補助金の公募に関する情報が近日中に公開される予定である。是非その内容を確認して頂きたい。

<参考ホームページ>

平成30年度税制改正(中小企業・小規模事業者関係)の概要

http://www.chusho.meti.go.jp/zaimu/zeisei/2017/171225zeiritu.pdf

(研修)「平成30年度の税制改正大綱」について検討する

/平成30年1月20日(土)於:アルカディア市ヶ谷(私学会館)

パネラー:宮本雄司(本所支部)、坂田覚(板橋支部)、菅原祥元(麻布支部)

平成30年1月20日にて、アルカディア市ヶ谷にて専税協議会が行った「平成30年度の税制改正大綱」の研修について、今後の税理士業務に関係あるところを中心に税制改正大綱の中身を検討いたしました。

具体的には、働き方改革と所得再分配、事業承継税制の緩和措置、電子申告の推進と普及、小規模宅地等の特例、所得拡大促進税制といったこと中心に検討いたしました。

 

1.サラリーマン課税等(所得税)の変更がどのようなものなのか?

先般、報道等によって税金を取りやすいところからとるという指摘があったが、その背景は次のようなものである。

キーワードは所得再分配、働き方の多様化(給料、フリーランス、在宅など)。働き方によって、事業、給与、雑と異なっているが、その所得種類によって税額を解離させない、近づけるという理念がある。

以下、改正の概要としては、大きく分けて4つのポイントがある。

  1. 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除へのシフト。
  2. 高所得者について給与所得駆除を引き下げ。
  3. 年金以外に特に高額の副収入がある者について公的年金等控除を引き下げ。
  4. 特に高額の所得がある者について基礎控除を逓減・消失。

☆働き方の多様化

給与所得控除が過大なのではないか?(財務省主張)という点が挙げられるが、今回は、給与所得控除のうち10万円を基礎控除に振り分けることで、事業や雑に所得計算上の恩恵を与えている。

また、給与所得控除から基礎控除へ10万円を振り分けるので、給与所得者にも基礎控除での10万円分の控除を受けられるので、いってこいになる。

☆所得再分配の見直し

日本では少子高齢化に伴い、以前の終身雇用から年金生活者というスライドになるということが少なくなり、働きながら年金も受給する生活になってきている。給与+年金という収入以外にも、不動産収入+年金といった年金とプラスアルファの収入があるので、その部分の再分配機能を高めようと考えている。

したがって、公的年金控除から基礎控除への振り分けが行われた。加えて、現状の所得税の計算方式では、高額所得者ほど、所得控除の恩恵があるので、特に高額の所得がある者については、基礎控除を逓減・消失させる。

改正では基礎控除は現状の38万円から48万円に課税の最低が引き下げられるのに対して、高所得者には、所得控除の恩恵をさせない改正となっている。

☆給与所得者について

具体的には、控除額が頭打ちとなる給与収入を850万円超に引き下げるが、子育世帯(22歳以下の扶養親族が同一生計内にいる者)、介護世帯(特別障害者控除の対象者が同一生計内にいる者)には負担が生じないように手当を行う。

☆年金受給者について

①公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に上限を設ける。

②年金以外に特に高額の副収入(1,000万円超:0.5%)がある年金受給者の控除額を引き下げる。

☆給料と年金の両方の収入がある方や子育世帯、介護世帯について

給与所得控除と公的年金等控除のそれぞれから10万円ずつ控除されるので、合計20万円の控除減になるものの、基礎控除は10万円上がることになる。

この場合には、所得金額調整控除にて調整が図られることになる。

☆基礎控除の逓減・消失について

給与所得控除、公的年金等控除から基礎控除へ振替をするだけなので、基本的には増税にはならないが、所得金額調整控除の対象外にならない、子育世帯、介護世帯以外が増税になる。

☆基礎控除が使えなくなる(消失)ライン

合計所得金額2,500万円超からは基礎控除が廃止になる。合計所得金額2,400万円から段階的に基礎控除が逓減していくことになる。

高額所得者は、給与所得控除が下がり、基礎控除も下がるということになる。基礎控除の消失については、憲法25条の生存権からの理念、所得再分配機能と応能負担原則からの理念がある。後者の理念からすると、違憲にはならない。

☆上記の適用時期

平成32年分以後の所得税及び平成33年度分以後の個人住民税について適用する   こととなる。

☆青色申告特別控除の改正について

控除額を55万円(現行:65万円)に引き下げる。しかし、電子帳簿を作成して備付けと保存を行うか、期限内申告で電子申告をすることで65万円控除になる。電子申告をしない人は、55万円に下がることになる。

 

2.事業承継税制

(1)事業承継税制概要

①入口の要件の抜本緩和

総株式の最大2/3⇒全株式が対象、猶予割合80%⇒猶予割合100%。

承継後5年間平均8割の雇用維持が必要⇒雇用要件は弾力化(一定の場合には、認定支援機関の指導助言)。今までだと、猶予できる割合は80%×2/3=53.33%であった。今回の改正で、猶予できる対象が100%になった。今まで一番厳しかった要件である雇用要件が緩和された。ただ、認定支援機関でないと事業承継税制が使えないことにもなっている。

(2)具体的な改正の内容と例示

①承継後の負担の抜本軽減、経営環境変化に対応した減免制度

会社を譲渡(M&A)・解散した場合には、税額を再計算⇒税負担に対する将来懸念を軽減。

例:贈与相続時の税額4,800万円、解散譲渡時の税額3,700万円、差額の1,100万円を免除する

②5年以内の承継計画の届出

・後継者指名や経営の見通し等。

・金融機関その他の認定支援機関の指導助言。

③10年以内の贈与・相続が対象

その後の猶予期間も含めて特例が適用される。したがって、平成30年から10年間の特例制度。

④承継パターンの拡大

複数人⇒1人、1人⇒最大3人(代表者)も事業承継税制の対象とする。

例:兄弟で会社をやっている場合など、複数での対応が可能となる。

⑤相続時精算課税と事業承継税制

特例後継者が推定相続人以外の者となったことで、他人でも事業承継の道が開け、相続時精算課税の適用を受けることができるようになる。

⑥一般社団法人に関する課税の強化も導入された。

⑦導入開始時期

平成30年1月1日から適用になる。

 

3.小規模宅地等の相続税の課税の特例に関する改正

(1)家なき子特例に課税強化

持ち家がなくても、同族会社の社宅に住んでいる場合等には、家なき子特例から除外されることとなった。形式的な要件を無くして、実質的な所有の有無での判断となる。

(2)貸付事業用宅地等に課税強化

貸付事業用宅地の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の様に供されている宅地が除外されることになる。

(3)適用開始時期

平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産について適用になる。

 

4.法人税関係に関する改正

(1)所得拡大促進税制

①中小企業に関する改正について

【要件の変更】

平均給与等支給額が前年比1.5%以上の増加(前期との比較のみとなった)

【税額控除】

・給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除になった。

・10%の上乗せ措置も追加(次のいずれの要件を満たす場合)

-平均給与等支給額が対前年度2.5%以上増加。

-教育訓練費増加要件を満たす場合。

・上記15%と10%の上乗せを含めると⇒最大で25%の税額譲渡なる。

・ただし、税額控除限度額は法人税額の20%が限度。

※教育訓練費増加額等の要件:次のいずれかの要件

①当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費の1.1倍。

②中小企業等経営強化法の認定に係る計画における経営力向上の証明。

 

5.注目されている改正点

(1)情報連携投資等の促進に係る税制の創設

(2)法人税における収益の認識等についての措置について

(3)納税環境整備(大法人の電子申告の義務化へ)

(4)国際観光旅客税の創設

(5)消費税の簡易課税(農業所得の区分が第3種事業から第2種事業に変更)

 

「論」消費税は貿易自由化の妨げになる?

(税界展望 第531号)2018年(平成30年)3月19日

トランプ大統領が、鉄鋼とアルミニュウムの輸入に新たな関税をかけることを決めた。鉄鋼は25%、アルミニュウムは10%の追加関税がかけられる。この一方的な輸入制限の発動について、自由貿易体制を危うくすると他国から批判が相次いでいる。

しかし、米国と日本の税制でこの問題を考えると、日本の消費税の値上げは、米国にとって関税を上げるのと同様に感じられると予想される。

消費税値上げ時には、いま日本が米国に向かって行っている非難は、同じように米国から日本に向かう。当然トランプ大統領は消費税アップに反対する。こう考えると日本の消費税率10%引き上げを阻止できるのはトランプ大統領だけではないか?

10%の消費税アップが止まれば、われわれ皆が反対している税率アップに伴う軽減税率導入、その後のインボイス制度導入も行われなくなる。

私はこの一点のみをトランプ大統領に期待する。

 

1.日本との自動車貿易が不公平?

トランプ米大統領が就任当初、日本との自動車貿易が不公平だと批判し、貿易赤字を解消するために二国間の協議に乗り出すことを示唆した。

この言動に対し日本側は、乗用車の輸出関税は、米国の2.5%に対して日本はゼロだ。トランプ氏の時代錯誤の認識に耳を疑う、との見解である。

しかし、トランプ氏の発言は、日本と米国との税体系の違いに言及しているのだとしたら筋が通ってくる。

 

2.アメリカには消費税はない?

付加価値税・消費税は今や世界の約140カ国で採用されている税制度である。ただし、その中に米国は含まれていない。なぜ米国だけが採用を見送り続けているかを考えるポイントとして、付加価値税に組み込まれた輸出企業への還付金の存在がある。

消費税の大原則として、課税をするのは消費をした土地でなくてはいけない、という「仕向地原則」が存在する。そして、輸出企業は価格に転嫁できない(輸出売上にゼロ税率をかけた額、もちろんゼロ)唯一の例外として取り扱われ、仕入れにかかった税金を還付してもらえる。

このように、消費税については国境調整として、輸入品には課税、輸出品には還付金(リベート)は当然の認識になっている。

米国で政治家やメディアが消費税について語るときは誰もが「消費税?ああ、輸出企業へのリベート(還付)がある税金ね」というくらい認知されており、「消費税導入をしたって、結局は関税引き上げの競争になってしまうだけだからナンセンス。」という意見につながっている。(文春新書「アメリカは日本の消費税を許さない」岩本沙弓著 参照)

 

3.5兆円強が巨大輸出企業に還付され続けている

8%現在で還付金が1番多いのはトヨタ自動車で3,231億円、2位の日産自動車には1,190億円、3位のマツダには662億円、4位の本田技研工業には619億円と自動車産業が続く。6位の三菱自動車にも512億円の還付金がある。2014年4月から税率が5%から8%に上がったため、これらの大企業の還付金額は大幅に増加した。国税庁の発表によると2016年4月から2017年3月期における消費税及び地方消費税の還付金額は5兆4,322億円となっている。

輸出大企業は消費税を納税しないばかりか5兆円を超える還付金をもらい続けている。そして還付金の原資はトヨタなどの輸出企業ではなく、下請け先や仕入先が税務署に納付した消費税である。

 

4.消費税率引き上げは非関税障壁引き上げ?

米国は消費税を導入していないので、日本の100万円の車を米国で売るときは、100万円と関税2.5%で102万5千円である。米国の100万円の車を日本で売るときは、関税ゼロといっても消費税がかかり108万である。そのうえ、日本の100万の車を作った輸出企業には8%の還付があるので米国よりもずいぶん原価は安くなる。

日本の消費税が8%から10%に引き上げられれば、日本に入ってくる輸出品の価格は全て2%上昇する。米国からすれば、自国製品が2%値上がりする。その上、日本の輸出企業に対して還付金が2%多く支払われる。

消費税率引き上げは非関税障壁引き上げになり、米国製品は売れなくなる。

 

5.今後予想される展開

トランプ大統領の鉄鋼とアルミニュウムに輸入関税を課すことに際し、各国は世界貿易機関(WTO)に提訴できる。

しかし振り返ってみると、GATTは、輸出企業に対して補助金を出すことを禁じており、その盲点を突くようにできたのが消費税である。それゆえ、米国は消費税を不公平税制として採用していない。消費税がある国はトランプ大統領に意見を言えないのではないか。

加えて言うなら、輸出の低迷を保護主義によって解決しようとするトランプ大統領に、非関税障壁になって例外的に認められている消費税をWTOから取り除くほうが現実的で米国の正義を貫く方法では、と訴えたい。

「論」税理士業務とAI

(税界展望 第530号)2018年(平成30年)2月8日

年末調整の一連の業務が終了する1月末に、今後AIを会計業務でどのように利用していけばいいのかを考えてみたいと思う。住民税の特別徴収を徹底するということで今後は、零細企業も住民税を給与から天引きせざるを得なくなってきた。給与支払人数が2名以下であれば東京はまだ普通徴収を認めるようであるが、他県では給与支払人数が1名であっても特別徴収を徹底するということである。普通徴収では住民税の徴税コストがかさむのだろう。会社に住民税相当の給与の差し押さえ通知が来るという話もよく聞く。市区町村としては、徴収そのもののコストも会社に負ってもらいたいということが本音だろう。

また社会保険に加入していなかった零細企業は年金事務所から加入を促され、多くの零細企業が加入することとなった。加入はもちろん義務であるのだが、社会保険料を自分で計算して給与を支払うことのできない零細企業が続出した。源泉所得税の計算のように毎月の給与の額で社会保険料の控除額も決まると思っている経営者もいて、給与の支払額が間違っているのを訂正するのにも苦労をした。今後はこれに住民税の控除が加わる。所得税は国に対しての一か所の支払いだから間違いようがないが、住民税は複数の支払先となるので、支払いを間違えると預り金勘定が一致しなくなり、後でのチェックが大変になってしまう。更に従業員が退職した場合には、給与所得者異動届出書を作成できない会社も多いだろう。いままで会計事務所は従業員が退職した際に連絡をもらうことは少なかったと思う。今後は会社で異動届出書を提出できるように指導したいのであるが、めんどうくさいので先生のところでやってもらえませんか。という要望がすでに2社ほどでてきた。記帳代行業務から自計化へ移っていったのと同様に、給与計算業務もタイムカードからICカードを利用することによって業務時間の短縮が図られている。会計ソフトのベンダーも給与計算がいかに不効率に行われているかが分かっており、会計事務所が年末調整、給与支払報告書の提出までをスムーズに進められるようソフトウェアの開発が進んでいる。

しかしである。一番の問題は少人数の従業員しかいない零細企業の給与計算が問題なのである。ある程度の規模の企業はすでに給与計算は自前でできている。今後は会計事務所が給与計算のチェックもしていかなければならいため、税理士報酬がそれほど望めない会社ほど手間がかかることになる。

本来零細企業などでAIを利用して業務の効率化を図りたいところなのであるが、実際にはなかなかアナログから脱却できない。例えば銀行取引はネットバンキングを行っていれば自動的に取引を仕訳に取り込むことができるのだが、法人の場合にはネットバンキングの利用料金は月2,000円かかる。これが高いということで零細企業には導入されない。さらに給与計算などもクラウドで行えるソフトが登場しているが、1人会社の場合には月々450円の利用料でも「エクセルで自分でやってみる」ということで利用してくれない経営者もいる。そのエクセル計算も間違っていたりして、年末調整を考えれば結局会計事務所が1月から12月まで給与データを再度入力しなおすことになる。小規模な飲食店はアルバイトの計算だけでも大変である。コクヨの手書きの給与明細が売られているが、源泉・社保・住民税を計算して記入するだけでも手間である。現在での解決策としては料金はかかるがクラウドの給与ソフトにすることが一番であると思う。何とかこちらに移動してもらえるよう提案しているところである。また給与計算だけではない。来年には消費税の軽減税率が始まる予定であるが、また零細企業の記帳業務に滞りが起こるに違いない。本当に導入はやめてもらいたいものである。

AIが会計事務所の仕事を奪うという話は有名であるが、お客様がAIを利用して業務の効率化を進めていくには、会計事務所の最初のサポートが重要である。常にサポートし続ける必要はなく、とにかく使えるようになってもらうことである。零細企業にAIが浸透して会計業務が自動化されれば、会計事務所の職員が大半の時間を費やしている業務はなくなることになる。これと税理士業務がAIでなくなることとは別の問題である。会計事務所の職員の採用は困難を極めているので、AIの力をつかって極限まで業務を効率化することで人材不足を補っていくことになるだろう。