税界展望

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企業を取り巻く状況について

(第601号掲載)

中小企業の業績は、業種によってばらつきはあるが、新型ロナウイルス感染症が5種に移行した後、コロナ禍の落ち込みから回復してきていると思われる。

(1)「人手不足」「生産性の向上」

現在多くの中小企業の経営者は人材不足に直面しており、又賃上げにも対応しなげればならない。この「人手不足」を補うため・人件費を捻出するためにも「生産性の向上」を目指す必要がある。                  
「人手不足」については、働き方改革に基づく時間外労働の上限規制により以前のように少数人数による働き方は難しくなり人手が必要となる。企業における人手不足はますます深刻化している。人材を十分確保できている企業が取組んでいる事項は、①賃金賞与の引き上げ②働きやすい職場環境の整備③定年延長や高齢者・外国人労働者の活用④機械化や自動化の実施等がある。企業の経営者もこれらを真剣に検討する必要に迫られている。
①の賃上げについて、東京都の令和6年の最低賃金は、過去最大50円の引上げの1,163円となった。賃金上昇→消費の増加→製品需要の増加→労働需要の増加→生産性の向上増加→企業収益の増加の成長と分配の好循環を目標としている。しかし物価上昇などの影響による防衛的賃上げ(離職防止などのために行う賃上げ)を実施している企業が多いのが現状である。厚生労働省や経済産業省等における賃上げ支援施策(各種給付金・助成金)により賃上げ環境の整備に向けた取組をしているが、その周知不足もあり活用は少ないようだ。
 「生産性の向上」については、①人間が行う作業を見直して効率化を図り、機械やシステムを導入することで作業負担の減少させるための省力化投資を行う。省力化・デジタル化投資の推進による生産性の向上をした企業の売上高はプラスの変化がみられる傾向があるという。
②価格転嫁-従来の低コスト化・数量増加で取組んできた企業もコスト増加分を十分に価格転嫁するように取引先との交渉をする必要がある。経済産業省は中小企業等に対して、2024年4月から9月末の期間に発注企業との間の価格交渉・転嫁の状況を問うアンケート調査を実施。その結果実際に価格交渉を行ったことにより価格に反映された例も最近増加しているとの事。但し原材料・エネルギー費の増加による価格転嫁交渉に比べ労務費増加による価格転嫁交渉は依然として低迷傾向にあるようだ。また価格転嫁率は1次請け企業に比べ4次請け以上の階層の転嫁率は低い。今後の対応として中小・小規模事業者の賃上げ原資確保のためにも価格転嫁対策を継続するとなっている。

(2)小規模事業者の現状  

最低賃金は毎年アップするが、製造業等については従来からの受注単価がなかなか変えることができない。また下請け企業では大手企業への交渉は厳しいのが現状である。働き方改革で従業員の労働時間を守るため経営者側がかなりの負担を強いられている。業務改善助成金・キャリアアップ助成金等の各種支援策を実施しているが、周知不足もあり認知度が上がっていない。また利用しようとしても申請等の手続が煩雑で、結局申請を途中で諦めてしまう傾向がある。このような現状を行政は把握して各種施策を実行する必要がある。


(3)その他

①令和7年度税制改正大綱概要に対する対応(内容は税界展望第600号参照)    

②企業経営者においては上記①のほか2025年は、行政手続の電子化や育児・介護支援、高齢者・障害者雇用などの分野で法改正が行われる予定。
③職場におけるパワハラ・セクハラ・マタハラ等のハラスメントは法令により一定の防止措置を講ずることが会社に義務付けられている。また2024年11月1日からはフリーランスに対するハラスメントについても防止措置を講じることが義務付けられた。
④お客様からの苦情に対する「苦情対応マニュアル」の作成。最近はカスタマーハラスメントに対する会社の対応を検討し、従業員を守る姿勢を示す。
 

私たち税理士は顧問先との間において、税務相談以外の事項についての相談にどのような対応をすべきであろうか。

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専税協議会第57回定期総会

定期総会

(第586号掲載)

令和5年7月22日(土)午後1時30分より、アルカディア市ヶ谷(私学会館)4階「飛鳥」において、専税協議会第57回定期総会を開催した。

第一部 定期総会、第二部 記念講演、第三部 懇親会を開催し、盛況裡に終了した。

第一部

 定期総会は午後1時30分より、青木久直副会長が司会を担当する旨を述べ、全体の流れについて説明をした後、開会の宣言を行った。続いて菅原祥元会長から会員への謝辞とともに、インボイス制度反対についての取り組み等この一年間の活動の報告、12月の東京税理士会役員選挙において、勝又和彦会員が副会長に当選した旨の挨拶があった。

議事に入る前に平野信吾監事より、本日までに専税協議会事務局に届いた議決権行使書について、83名中36名の書面による議決権行使書が届いているとの報告があった。また、現在会場の出席者は9名であると報告された。議長として麻生昌敬会員(江戸川南)が選出され議事に入った。第1号議案から第4号議案まで賛成多数で承認可決され、第5号議案において菅原祥元(麻布)会長をはじめとする新役員が選任された。(新役員の名簿は本誌●Pに掲載)

第二部

 記念講演は、阿部徳幸氏(本郷支部/税理士、日本大学法学部・同大学院法学研究科教授)を講師に迎え、「デジタル化に向けて税理士はどうするべきか?」をテーマにご講演頂いた。

第三部

 懇親パーティは、部屋を移して盛大に行われ、なつかしい顔合わせ、新しい面々など互いに懇親を深め、有意義なひと時を過ごした。

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「まち歩き」の記 ‥‥ その7

(第599号掲載)

 渋谷支部  倉林倭男

 初冬の澄み切った青天の下、出身校(現小石川中等教育学校)ゆかりの地を巡るまち歩きを実施した。午後2時に旧小石川高校の正門前に集合し、前後30期にわたる同窓生約30人でのまち歩きであった。

 まず不忍通りを大塚方面に進み、途中で左折し明化小学校へ。ここは戦時中校舎が被災した時に一時仮住まいした学校である。さらに文京十中、林町小学校を巡る。途中に一橋徳川家所有の樹林園が保存された千石緑地を見学。それから小石川植物園脇の網干坂を下って、占春園へ。ここは江戸時代松平頼元の屋敷の庭であったところで樹木が鬱蒼と茂っている。占春園の脇を抜けると、教育の森公園である。ここは府立五中初代校長の伊藤長七ゆかりの東京高等師範学校(現筑波大)の跡地であり、文京スポーツセンターが併設されている。しばらく休憩の後、春日通を渡ってお茶の水女子大、跡見学園、拓殖大学を見ながら、茗荷谷駅前を通って、文京区立茗台中学校へ着く。戦後小石川高校が移転していた同心町校舎の跡地である。校舎前で記念に集合写真を撮る。それから何かと縁のある竹早高校を横目に、傳通院へと歩く。家康の生母お大の方をここへ葬り、後に堂宇を起こし傳通院となったという。

徳川家ゆかりの女性の墓が多くある。傳通院に縁のある澤蔵司稲荷へ向かう善光寺坂の途中、道路の真ん中にムクノキの老木が枝を伸ばしている。文京区の天然記念物に指定されているそうだ。澤蔵司稲荷にお参りした後に近くのこんにゃく閻魔を見学する。江戸時代、目を患った女性が近くの閻魔さまに、平癒を日々願ったところ、夢の中に閻魔大王が現れ、自らの右目をこの女性に与え、眼病を治癒させた。女性は感謝の印として好物のこんにゃくをお供えしたとの由来の閻魔さまである。

 歩き疲れたこともあり、懇親会の時間も迫っていたので、東大赤門見学をスキップして、後楽園駅から本郷三丁目駅まで地下鉄を利用し懇親会場へ向かった。なんと楽だったことか。懇親会場へ着いてみると、既に3人の友人が席に座っていて大笑い。いつものように乾杯から懇親会が始まったのであった。


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