選挙制度改革の混迷から見えた、東京会役員選挙の意義

 2020年04月01日

(第552・553合併号掲載)

昨年の11月6日の理事会で、同年6月に設置された選挙関係プロジェクトチーム(以下「選挙PT」という。)から、本会のホームページを利用した電子投票システムへの変更の中間報告がなされた。

このホームページ投票は、会員の利便性が増し、選挙事務の大幅な削減が可能であり、また、投票率の向上も期待できる。二重投票やなりすまし、投票内容の漏えい防止にも一定の技術的目処が立っている。さらに選挙費用についても、平成30年度の役員選挙での費用が約1500万円かかっているが、インターネット投票とした場合、投票等にかかる費用が約500万円に節減できる可能性がある。

このいいことずくめのインターネットを使用した投票方法の変更は、理事会でデモンストレーションが行われ、令和2年2月原案審議、3月、4月総会議案審議、6月総会で議決、本年12月に予定されている東京会役員選挙は新制度で行われる、というロードマップまで示されたため、今度こそ会員のための選挙制度になる、よくぞ踏み切ったと評価し改正を確信していた。

ところが、12月の理事会で西村会長から選挙PTへ、役員選挙に関する検討についての再諮問がなされ、1月の理事会でもロードマップ通り行うかはっきりせず、2月の理事会ではついに、選挙PTからの報告を預かった企画戦略室の名義で、ホームページ投票を行う改正の目処については、令和3年度定期総会という意見がある、と公表された。

これは何があったのだろうと考えると、令和3年に延期するという意見が載った企画戦略室の報告の中に「PT中間報告でホームページ実施のロードマップを示しておきながら、明確な問題点を示さずに実施を延期することは、執行部に対する会員の不信を招きかねないとの意見もあった。」と書かれていた。我々と同じ感覚の企画戦略室の部員もいたのだなと思う反面、執行部は制度の前進よりも、個人の利益を優先して、反対しているのでは、との思いに至った。それをうかがわせる文章として「税理士法人自体が選挙に介入することを排除」、のような意見が企画戦略室から上がっている。

東京会役員選挙は、東京税理士会に会員の声を届け、本会を民主的することが、国民のための税理士制度、国民のための税制を目指し、納税義務者の信頼にこたえることに通じると思っている。

ところが税理士会の現状を見ると、税理士法改正では、税理士の使命に納税者の権利擁護を明文化する改正は、速やかに改正すべきものではないと結論づけた。

消費税軽減税率廃止、インボイス制度導入中止は、重点施策には残ったものの所掌する調査研究部の事業計画からは削除された。1丁目1番地と言いながら、事業計画に入っていなかったら実施できないのではと懸念され、ポーズだけと批判されても反論しにくいのではないか。

また、国民総背番号制度につながるとしてマイナンバー制度に反対していた東京会は、給付付き税額控除を行うため賛成すると意見を変えたが、給付付き税額控除など何も進んでいないにもかかわらず、マイナンバー制度の急先鋒になっている。今年1月18日の日経新聞に、「高市早苗総務相は17日の閣議後の記者会見で、金融機関の預貯金口座とマイナンバーのひも付けを義務化するため、財務省と金融庁に検討を要請したと述べた。『相続や災害発生時の預貯金引出の負担を軽減できる』と意義を強調した。2018年1月に始まった現行制度では、預貯金口座とマイナンバーをひも付ける『付番』は利用者の任意となっている。国民の間では政府に資産を把握されることへの抵抗感が強い。」という記事が載った。税理士会は、マイナンバー制度は真に国民のための制度か否かを問い直す時期に来ていると思う。

国民のための税理士制度、国民のための税制を構築するための東京会役員を選任する選挙でなくてはならない。税理士会の選挙だけでも、制度の前進につなげなければ、やる意味はまったくない。