資格取得問題こそ税理士法改正の原点

 2022年01月28日

(第570号掲載)

令和3年12月17日令和3年度第71回の税理士試験の結果が発表された。5科目到達者数は585人、去年の648人よりさらに少なくなっている。

 折しも令和3年12月10日に発表された与党税制改正大綱に「税理士制度の見直し」が掲載された。内容に受験資格要件の緩和は書き込まれたが、「税理士となる資格を有する者は、税理士試験に合格した者を原則とする。」は入らない。

 平成26 年3月の税理士法改正において、税理士法第3条第3項が新設され、平成29年4月1日以後に公認会計士試験に合格した者のうち税理士資格を取得できるのは、公認会計士法第16条第1項に規定する実務補修団体等が実施する研修のうち、財務省令で定める税法に関する研修を修了した者とされるとともに、当該研修は、改正税理士法施行規則第1条の3第1項において国税審議会が指定する研修とされた。

 平成28 年6月3日の第74 回国税審議会の税理士分科会で、第72回国税審議会税理士分科会の審議を踏まえ、「実務補習の充実策(案)」が提示され、研修指定の枠組みについて審議を行った。

 その結果、国税審議会としては、同案のとおり整備が行われた後の実務補習における税法に関する研修を税理士法施行規則第1条の3第1項に定める税法に関する研修として指定するとの方向で一致した。そして、日本公認会計士協会等において実務補習について所要の規程の改正等が行われたと認めたときは、当該研修を税理士法施行規則第1条の3第1項に定める税法に関する研修として指定し、その旨を速やかに官報に掲載すると決定した。

 また今後、公認会計士試験に関する制度改正に伴う実務補習の内容・質の著しい変更等、実務補習の制度又は運営に関する重大な事情変更が発生した場合には、指定対象である実務補習の枠組みに関し、同実務補習により税理士法第3条第3項及び同法施行規則第1条の3に定める学識と同程度のものが習得できるものであるかどうかについて改めて確認を行うこととし、毎年の実務補習の状況(修了考査及び考査の試験概要、試験問題、及び試験の実施状況に関する各種計数)について、日本公認会計士協会より報告を求めることとした。

 この決定に従い、実務補習団体等である日本公認会計士協会及び一般財団法人会計教育研修機構は、実務補習規程等の関係規程を、以下のように改正した。

・実務補習の充実策の一環として、監査科目だけではなく、税法科目も重要な科目と位置付け、考査の合格基準について従来の税法科目の考査2回で各回4割以上の取得に加え、税法科目全体で6割以上の取得を設ける。

・税法科目の考査2回については全国統一問題で同一日時に実施する。

・実務補習の考査及び修了考査の問題をウェブサイトで公表する。

 しかし、この改正により、公認会計士になれて、税理士になれない人は存在しない。公認会計士の「修了考査」の前の「考査」の税法に関する研修を指定しているので、これが6割とらなければ修了考査が受けられず、公認会計士になることができないからである。

 これからも公認会計士試験を受けて税理士になる者が輩出され続けるだろう。

 租税に関する法令に規定された納税義務の適正な実現を図るためには、税理士になるための試験を受け合格する必要があると、言い続けるしかないと考える。

 東京税理士会の理事会では、税理士登録申請書の日本税理士会連合会への進達について報告がある。ちなみに令和3年12月の報告では、84人が登録申請を出した。申請者の内訳は、試験合格者17人、試験免除者30人、公認会計士36人、弁護士1人となっている。

 この登録申請内訳と、税理士試験の結果として発表された試験合格者の人数の減少を考えると、税理士試験受験資格を緩和することが、税理士試験合格者増につながるのか、心もとない限りである。