税理士試験の動向

 2026年10月16日

(第617号掲載)

 令和8年度(第76回)税理士試験が、8月4日、5日、6日の3日間にわたり実施された。受験申込者数は4万5,954人(前年比437人増)となり、4年連続で増加している。

 また、科目別受験申込者数についても7万2,231人(前年比504人増)となり、同様に増加傾向を示している。

 以前、税理士試験の受験者数は年々減少傾向が続き、平成30年度以降は、4万人を割り込む状況となっていた。このような状況を改善するための施策として令和4年税理士法改正により受験資格の緩和が行われた。その結果、令和5年度税理士試験以降、簿記論及び財務諸表論については受験資格が撤廃され、誰もが受験可能となった。

 令和5年度以降、受験申込者数が4万人台に回復し、その後も徐々に増加していることから、今回の改正については一定程度の効果があったといえる。次期税理士法改正においても、更なる受験資格の緩和が検討されているとのことであり、今後の動向に期待したい。

 また、試験結果の発表方法についても変更がみられる。合格点に達しなかった科目については、従来、ランク判定が記載されるのみであったが、令和5年度からはランクだけではなく、具体的な点数も記載されるようになった。さらに、令和8年度からは、合格した科目についても新たに具体的な点数が記載されることになった。昨年度までは、合格科目の点数を知るためには、国税庁に対して保有個人情報の開示請求を行う必要があったことを考えると、大きな変更といえる。試験の透明性を高めることは、受験生が自身の学習状況や実力を把握することにつながり、受験に対するモチベーションの維持という観点からも重要である。

 最後に、今年度の税理士試験問題を下記に掲載する。

 税理士試験の理論問題は、「暗記が中心」といわれていた頃がある。しかし、現在では事例形式に出題傾向が変化している。単なる条文の暗記だけでなく、具体的な事例に対して法令等を適用し、適切な結論に導く能力が求められるようになっている。このような出題傾向の変化は、実務家を養成する試験という観点から望ましい傾向であると考える。一方で、事例問題に対応するためには、一定程度の知識の暗記が必要であることには変わりはない。

 そこで、税理士試験においても、司法試験と同様に「法文貸与」を導入し、法令等を参照しながら事例問題に対応する能力を測る試験としていくことも一案ではないだろうか。その結果として、法律科目を受験する者の増加にもつながる可能性があると考える。

 税理士試験の在り方については、デジタル社会の進展や社会環境の変化を踏まえ、時代に応じた変革が求められている。

 今後の税理士法改正においても、受験資格、試験方法及び試験結果の公表方法等について、引き続き検討を重ねていくことを期待したい。

【所得税 令和8年度理論問題】

 居住者甲は、卸売業を営んでおり、取引先に自動車で商品を配達している途中で、不注意で交通事故を起こした。そのため、その相手方に怪我に対する損害賠償金を支払った。  別日に、同じく商品を配達している途中で、交通事故にあい、甲は怪我を負うとともに配達中の商品が破損した。そのため、相手方が契約する損害保険会社から、怪我に対する損害賠償金及び商品に対する損害賠償金(商品の販売価額相当額)を受け取った。

 また、この交通事故により配達に使用する自動車が破損し修理に1か月を要したので、相手方が契約する損害保険会社から、1か月間休業することに対する休業補償金(1か月分の売上を補償するもの)を受け取った。上記設例を前提として、⑴~⑶の問に回答しなさい。

⑴ 甲が支払った損害賠償金の所得税法上の取扱いについて簡潔に説明しなさい。

 ⑵ 甲が受け取った怪我に対する損害賠償金、商品に対する損害賠償金の所得税法上の取扱いについてそれぞれ簡潔に説明しなさい。 ⑶ 甲が受け取った休業補償金の所得税法上の取扱いについて簡潔に説明しなさい。