税理士法改正

 2019年09月01日

(第547号掲載)

日本税理士会連合会(以下、日税連)より「次期税理士法改正に関する答申 ― 時代の変化に対応し、未来を創る制度の構築に向けて ― 」が公表された。今回の答申は、平成29年9月に諮問のあった「次期税理士法改正に向けた検討について」の審議に際し、日税連制度部において「税理士制度は、税務に関する専門家として納税義務の適正な実現を図るという使命のもと、申告納税制度を支え国家財政の基盤確保に寄与するものであり、国民にとって必要不可欠な制度であるということを基本的な認識とし、この基本的な認識のもと、税理士制度に関し将来想定される問題点の検討を行い、近未来における税理士制度のあり方について論点を整理し、現時点における日税連制度部の議論を取りまとめたものである。」としている。取りまとめた項目を見てみると「一 ICT化への税理士法の対応、二 ICT化社会における税理士事務所のあり方、三 税理士法人への対応、四 試験制度のあり方、五 平成26年法改正における未実現項目の取扱い、六 業務の適正化に向けた環境整備、七 引き続き検討を要する項目」の7項目が挙げられている。

コンピューターの性能が飛躍的に向上するとともに、インターネットが広く普及し、経済環境においてもICTが大きく取り上げられ、ICTを活用した行政サービスの効率化が推進されている。政府としても電子政府を掲げe-Govを推進している。税務手続きの変化も同様でありe-Taxを中心とした電子を前提とした手続きへ向かっている。今回の答申は、このような経済環境がICTへ進む中での税理士制度についての対応が主な内容である。

一方、これまでの税理士法改正の大きな改正を眺めてみると「昭和31年 特別試験制度の創設、強制加入制度の創設、昭和36年 特別試験制度の存続期間を当分の間延長、昭和55年 税理士の使命の明確化、税理士業務の拡大と充実、特別試験制度の廃止、税務職員への会計学に属する科目の免除制度の導入、平成13年 受験資格要件の緩和、試験科目の免除制度の見直し、補佐人制度の創設、税理士法人制度の創設、平成26年 受験資格要件の緩和、補助税理士制度の見直し、公認会計士に係る資格付与の見直し」である。これまでの税理士法改正の検討項目は、税理士制度の根幹となる「使命の明確化」と「資質の確保、向上を図るための資格取得制度」を中心として改正項目の検討がなされてきた。そして、その根底に流れるのは、昭和47年に日税連の理事会決定された「税理士法改正に関する基本要綱」である。「税理士法改正に関する基本要綱」の改正の「基本的考え方」を見てみると、1.使命の明確化、2.資質の確保、向上、3.自主権の確立、4.業務の拡大と整備、5.権利義務の拡充と整備、6.税理士業務の制限の徹底と6つの事項が記載されている。「税理士法改正に関する基本要綱」の内容は実現可能性が困難と思われる項目も多いが、いつの時代においても税理士法改正の根底に流れるものである。

申告納税制度は、納税者が租税法の規定に基づき、自ら税額を計算し、税額を確定させる制度である。そのため、納税者の代理人となる租税に関する法律の専門家の存在が必要になったのである。税理士制度は、納税者の代理人として、租税法令に定める課税標準等を適切に判断し、納税義務の適正な実現を図るとともに、納税者の権利利益を擁護する税務の専門家としての社会的要請から生まれたものである。

確かにICTによる行政サービスの効率化が大きく推進され、電子による手続きが前提となることにより、我々税理士の業務への影響もあることではあるが、現行の税務手続きが、電子を前提とする手続きに代わっていくことであり、税理士制度に関し将来想定される大きな問題点になるのであろうか、それよりも、申告納税制度における、納税者の代理人として、納税者の権利利益を擁護する税務の専門家としての立場を深く認識し、これまでの税理士法改正を深く掘り下げ、税理士制度の根幹となる「使命の明確化」と「資質の確保、向上を図るための資格取得制度」について更なる検討を進めることが必要ではないであろうか。