税理士界のアフターコロナ

 2020年07月08日

(第555号掲載)

 新型コロナウイルスの影響により、仕事や生活習慣が見直される。感染拡大防止の対策として緊急事態宣言が発令され、先の見えない状況下において、それぞれの立場で今後の社会をどう生きるかを考えざるをえなくなった。我々税理士業界においても、税制、税理士制度、税理士の業務や税理士会の会務についてそのあり方が問われる。

① 税制

 災害時と同様に特例措置が施された。とくに大きな措置として国税庁より所得税、消費税、贈与税の申告期限の一か月延長が公表された。また、その後納税猶予についても弾力的な対応がなされた。3月15日の申告期限については、年末調整から確定申告期限まで集中する業務の平準化、諸外国に比し短いといわれている期間や、消費税制の改正による事務負担の増加等により申告期限の延長を東京会は要望している。よくよく考えてみると1月、2月、3月はインフルエンザウイルスの活発な時期であり、この時期に確定申告の無料相談や申告手続きを集中的に行うことは、国民や税理士にとっても感染リスクがあり今後はスケジュール含め対応を考えないといけない。

② 在宅勤務、テレワーク

 緊急事態宣言が発令され、不要不急の外出制限や時差出勤、テレワークや在宅勤務が推奨された。働き方改革の観点もあるが、新型ウイルスの感染拡大を防止し税理士や事務所スタッフを守る意味でも事務所外で作業ができる制度的な仕組み作りが急務である。日税連制度部が次期税理士法改正に向けた会員への意見募集にもこの項目が取り上げられ、指針作りの重要性を認識している。業務対策部より緊急的にテレワーク類型のうち在宅勤務に関するFAQが公表されたが、税理士業務とテレワークについて引き続き検討すべきである。

③ 研修受講の義務

 研修については、研修そのものが義務でなく「研修受講」が義務化されている。つまりは普段の業務遂行のための研修は自己研鑽で当然のことであり、税理士会が行う研修を受けることが義務である。いわゆる集合型の研修に参加することがオーソドックスな研修受講のパターンだが、マルチメディア研修やレポート提出に代えて受講義務をクリアする措置もある。新型ウイルスによって集合型の研修が難しくなる場合、研修制度については弾力的かつ新たな企画により受講義務を果たしやすくすべきである。

④ web会議

 新型コロナウイルス感染拡大のため、3月、4月、5月の理事会、支部長会が中止になり、6月5日に「ZOOM」による理事会・支部長会合同web会議が行われた。感染症の拡大防止の観点から集合型会議では議事が進まないことを考えるとwebでの会議は有効だが、議論を尽くし合う観点からは疑問符がつく。今般の理事会において会務執行細則の一部改正によりweb会議が制定されることとなったが、web会議の運用の仕方により議論不足が招く理事会の形骸化がないよう注視していかなければならない。

⑤インターネット投票

 東京会の役員選挙制度において、昨年選挙PTから本会のホームページを利用した電子投票システムへの変更の中間報告がなされたが、西村会長から選挙PTへの再諮問により、なし崩し的に先送りされ、今年12月の役員選挙については従来型の選挙制度で行われることになる。くしくも12月というウイルス感染が本格化する時期に会員は本会や支部に足を運ばなければならない。この事態が予測できなかったにせよ、e-tax等デジタル化を推進している本会にしてはデジタル化によって投票に参加できる仕組みに消極的な姿勢であったことが悔やまれる。投票率アップ、感染リスク防止の観点からも前向きな取り組みに期待する。

⑥ 予算と会費

 税理士会の業務もアフターコロナで社会の仕組みや生活様式に沿って見直される場合、大きなコスト削減が見込まれる。当然会費についても再考していくべきであろう。今後の経済状況によっては税理士事務所の経営も厳しくなっていくであろうし、税理士会として最低限取り組まなければならない業務を中心に予算を考えるべきである。会員にとって税理士会とは? 新たな時代の税理士会に課せられた命題である。 新型コロナウイルスによってもたらされる社会の変容に伴い、税理士会の従来のシステムについて、その改革の方向性を再認識することが急務である。