税務行政のDXについて

 2024年08月28日

(第586号掲載)

 近年、デジタル・トランスフォーメーション(DX) の推進が急速に広まっている。税務において、国税庁は令和5年6月23日「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2023」を公表した。国税庁は平成29年6月「税務行政の将来像」を公表。ICTの活用による納税者の利便性の向上、課税・徴収の効率化・高度化による「スマ-ト税務行政」を目指すとした。さらに令和3年6月「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像2.0-」を公表し、あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会、課税・徴収におけるデータ分析の活用とデジタルを活用した手続や業務の効率化を図るとした。今般「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション」を更に進めていくため、従来の「納税者の利便性の向上」と「課税・徴収事務の効率化・高度化等」に新たに「事業者のデジタル化促進」を加えた3つの柱に基づいて、諸施策を進めることが公表された。

1.納税者の利便性の向上<納税者目線の徹底>               

申告(納付・還付)、年末調整の簡素化・・・納税者の通常使い慣れたデジタ
ルツール(スマートフォン、タブレット、パソコン等)から簡単に手続できる環境の構築を目指す。具体的には「申告要否や手続を調べ、相談し、申告・納付する」という一連の流れを、申告に必要なデータを自動的に取り込むことで数回のクリック・タップで申告が完了する仕組み(日本版記入済み申告書)の実現を目指す。e‐Taxの改善やキャッシュレス納付の推進、公金受取口座を利用した還付、年末調整手続の簡便化、及び検索や相談(チャットボットの充実)のデジタルを利用した高度化等に取り組む。

2.課税・徴収事務の効率化・高度化等               

AIも活用し幅広いデータを分析することにより、申告漏れの可能性が高い納税者等の判定や、滞納者の状況に応じた対応の判別を行うなど課税・徴収の効率化・高度化に取り組む。オンラインツール等の活用によるリモート調査、国地方間のデータ連携拡大、金融機関等に対するオンライン照会の拡大等を図る。

3.事業者のデジタル化促進  

                    
 事業者が行う事務処理について、デジタルで完結することは、事務の効率化による生産性の向上が期待できる。このため税務手続のデジタル化と併せて事業者のデジタル化を促す施策に取り組む。そのためには、国税に関するデジタル関係施策・デシタルインボイスの普及・事業者のデジタル化を支援する施策の周知・広報。関係団体等の連携・協力による事業者のデジタル化機運の醸成を図るとしている。

 6月23日の公表の主な内容は上記の通り。実際あらゆる分野においてデジタルの活用が急速に進んでいる。昨今の税務においてもデジタル化により変化している。
①申告関係…電子申告の増加。個人の確定申告については、令和6年以降、スマートフォン・タブレット・パソコンのどちらからも利用可能とするようUI/UXの改善予定。所得税確定申告書等の様式の変更・相続税申告様式の変更。

②キャッシュレス納付の推進…振替納税・インターネットバンキング等・ダイレクト納付・クレジットカード納付・スマホアプリ納付。また令和6年5月以降はプレプリント納付書の送付対象者を見直す。

③令和5年10月1日からのインボイス制度の施行(電子インボイス・デジタルインボイス)

④電子帳簿等保存制度(電子帳簿等保存・スキャナ保存・電子取引データ保存)令和5年度税制改正による税理士法第2条の3として「税理士の業務における電磁的方法の利用等を通じた納税者の利便の向上等」が新設された。

 我々税理士は、税理士業務と税務行政のデジタル化に対応し、納税者に対し、適切な指導と説明が求めれる。またデジタル化社会における納税者の権利を検討し、対応しなければならない。