日税連制度部『次期税理士法改正に関する答申』(日税連HPに掲載)を読んで

 2019年06月01日

(第545号掲載)

平成29年9月の神津日税連会長の諮問を受けて、日税連制度部の検討の結果が平成31年4月17日に答申された。諮問の内容は、国税庁が平成29年6月に公表した「税務行政の将来像~スマート化を目指して~」を踏まえて、税理士業界の未来予想図を想定したうえで、現在から近未来につなげていける税理士制度について検討するというものであった。

答申ははじめに、税理士制度は税務に関する専門家として納税義務の適正な実現を図るという使命のもと、申告納税制度を支え国家財政の基盤確保に寄与するものであり、国民にとって必要不可欠な制度であるとの基本的認識を示している。次いでその基本的認識のもと、単位会制度部等及び日税連各部・委員会からの意見174項目について、働き方改革の影響や第4次産業革命の進展がもたらす経済活動の変化等を踏まえながら、将来想定される問題点の検討を行い、近未来における税理士制度のあり方について論点を整理し、現時点における当部の議論を取りまとめたものであると述べている。

答申の全容は各人でご確認いただくとして、いくつかの点についてコメントしてみたい。

ICT化への税理士法の対応

答申では経済社会の更なるICT化が進展し、税務行政もスマート化を目指す中、①電子的に行う税理士の署名押印について税理士法(以下、法という)に明示にすること、②電子申告代理送信は税理士用電子証明書に限定すること、③納税者との委嘱関係及びマイナポータル上の代理について明らかにすること、の3項目を法改正要望項目として挙げている。①と②については法33条の改正要望として妥当なものと考えるが、③の内容は法改正で対応すべきものなのか疑問に思う。現在でもどの税務代理権限証書が有効なのかの確認又は推定は課税庁で可能なのではないか。また、マイナポータルに関しては他の法律で手当てされる項目と思われるがいかがであろうか。

税理士法人への対応

答申は税理士法人の業務範囲について、個人として行っている租税教育や成年後見等の公益的業務を含めるよう、法48条の5を改正するべきとしているが、この項目は税務訴訟における補佐人と同様に、法48条の6での改正が妥当ではないか。

また、社員税理士が業務停止処分を受けた場合、法48条の4により社員資格を失うこととされているが、これを法48条の17(法定脱退)に追記すべきとしている。しかし、業務停止とは処分期間中は税理士業務を行うことができなくなるが、登録自体は抹消されるわけではなく、税理士の身分は保たれている。処分期間によっては、法人の解散事由に該当する前に業務に復帰することもあり得ることから、法定脱退の事由とすることは妥当ではないと考える。

試験制度のあり方

答申では、具体的改正には触れないとしつつも、学識による受験資格要件を緩和して、大学3年次未満でも受験可能とする法改正をと述べている。

法5条1項2号では学歴による受験資格を定めているが、答申の要望が現行の学識レベルを下げることを求めるものならば、その合理的理由、根拠を示さなければならないのではないか。単に税理士試験受験者数の減少への対策では理由にならないと考えるがいかがか。

※ 日税連では、答申に対する意見募集を、本年11月末日を期限として実施している。