新型コロナウイルス感染症の影響

 2020年10月05日

(第557号掲載)

 国内での新型ウイルス感染症の発生から、7ケ月が経過しようとしているが、終息の未透視については、未だ不透明な状況が続いている。この間税理士も、今までに経験した事のない状況に直面したことと思う。

(1)税理士業務

 令和2年3月は令和元年分の申告所得税及び復興特別所得税の確定申告・贈与税の確定申告及び消費税・地方消費税の確定申告時期で、税理士にとって繁忙期である。国税庁は、申告所得税・贈与税及び個人事業者の消費税の申告・納付等の期限を4月16日に延長することを告示、さらに個別申請による更なる期限延長を認めることとなった。例年の繁忙期が延びただけと感じた方もいますが、納税者にとっては申告どころではなく、新型コロナウイルス感染症による事業への影響が心配な時期だったと思う。特に飲食店等については、非常事態宣言が発せられ、不要不急な外出の自粛による顧客の減少、東京都等による緊急事態措置に伴う4月及び5月の休業・営業時間の短縮等の要請により、売上減少、従業員の給与支払い・家賃の支払などの資金繰りに悩んだ事業者が多い。中小法人等、個人事業者等について国税を含む国、地方自治体、金融機関等から多くの救済措置がなされた。

 顧問先からのこれら救済措置に関しての申請手続等について、その給付金等の内容及び適用要件についての質問相談が多く税理士に寄せられている。適用要件を満たしている場合、その申請及び融資手続につき、新型コロナウイルス感染症の影響による売上の減少・資金繰り状況についての各種書類作成の依頼があり大変だったと思う。東京都感染拡大防止協力金の申請については、税理士等の専門家による申請書の記載内容・添付資料の確認及び署名が求められ、持続化給付金及び家賃支援給付金については、給付要件に該当するか否かの確認、申請書に添付する書類関係の確認、要件に該当することを証する確認資料の作成、また創業特例・フリーランス等の場合の「収入等申立書」の作成及び署名等が求められた。

 電子申請により持続化給付金申請する場合、申請者が電子申請に慣れていない又は通信環境が悪い等の理由で困難な場合がある。申請フォームの記入や送信を有料で支援することは行政書士に限定されている。税理士が事業者の申請に係る支援をする場合、無償で申請フォームの記入送信を行うことは可能、また有償で申請手続やウェブ申請システムの操作方法の説明、必要書類の確認等を行うことは可能とされている。結構難しいことと思われるが、この点を留意して関与先のサポートをしなければならない。
 また最近持続化給付金申請において、事業実体のない人に対して税理士が不正受給を指南していた疑いがあるとの報道があった。不正受給は犯罪であり、①事業を実施していないのに申請する②各月の売上を偽って申請③売上減少の理由が新型コロナウイルスの影響によらないのに申請する等の行為も犯罪となる。不正受給と判断された場合は、給付金の全額及び延滞金その合計額の2割相当の金額を加えた額の返還。不正の内容が悪質の場合は刑事告発となる。

(2)税理士事務所

 緊急事態宣言が発せられると、感染リスクを軽減するため、事務所職員の時差通勤・ 在宅勤務・テレワーク等による感染予防対策を講じた事務所も多い。在宅勤務の場合、 就業する場所・設備(パソコン、ソフトウェア等)の問題・持ち出す資料の範囲・その 管理の問題・給与及び残業手当の取扱い等検討しなければならない事項も多く、税理士の使用人に対する監督義務をどう対処するかも課題である。

(3)その他

 コロナ禍の終息はいまだ不透明である。Withコロナを考慮して、事務所運営をしていかなければならない。また実際に事務所等から新型コロナウイルス感染者が出た場合の対応方法も検討準備しておく必要がある。コロナ禍により、事務所運営について・顧客との業務形態について・税理士の社会的使命について改めて考える必要がある。