惰眠を貪る税理士会さん そろそろ目覚めませんか!!

 2019年10月09日

(第548号掲載)

Ⅰ.大規模広域災害の日常化

近年我が国を襲う自然災害は大規模激甚化している。数十年に一度といわれる大規模災害に発せられる「特別警報」も、今や我々の耳には馴染んでしまった感がある。

我が国はその地理的条件から、風水害、地震、津波といった自然災害は常に身近にある。またその自然災害も広域化しており、災害を他人事として傍観することは許されない。

自然災害発生直後の混乱状態では、消防・警察・自衛隊等のマンパワーによる活躍が目覚ましい。その後徐々に被災状況が掌握され、避難施設が整備される段階になるとボランティアや様々な士業の被災者への生活支援や法律相談活動が活発化する。しかしそこに税理士会は・・いない、何もしない・・募金活動を除いては・・。その募金も被災納税者を支援するものではなく、他の税理士会への交付を目的とした「互助会」募金活動である。

税理士業界は「高い公共性」から業務独占が認められた唯一の税の専門家集団であると自負していたが、我が業界は大規模災害発生時には、自らの顧客である納税者以外の納税者の権利利益には興味を無くすようで、他の士業の「他会(高い)公共性」からの活動を見守るばかりである。これで良いのか税理士会!「税理士の使命」が泣いていませんか!

Ⅱ.税理士会の被災納税者への税務支援

税理士界は前述の消防・自衛隊のように、災害発生直後の被災住民の生死が問われる場面での活動は難しい。また税務に関する相談・質問は、災害発生から一定時間経過後に生ずる問題でもある。では、税理士は何をすべきか・・。まず初動対応は、被災者への広報活動で、税務情報の告知の努力をすべきである。かつて三宅島噴火災害被災者に「雑損控除」制度の存在を十分に告知しえなかった苦い失敗は、広報活動の質量の不足が最大の要因であった。商店のチラシや口コミだけでなく、行政の防災無線や広報誌、新聞・雑誌、テレビやラジオを通じた広範囲の広報活動を通じ、住民から「耳にタコだよ」と言われるまでの浸透が必要であった。こうした広報活動は個人の税理士では対応が難しく、まさに税理士「会」としての力の見せどころである。またその後の個別対応も、相談会場で机を並べて「税金相談はこっち!」という待ちの姿勢では、被災者に寄り添った対応とは言えますまい。税理士は、長靴はいて被災地・被災者の中へ飛び込むべきではないだろうか。

他方、税理士業界全体の制度的問題の解決も必要だ。税理士会は各会毎の縦型組織で構成されており、他会所属の税理士が境界を越えて他の税理士会の申告・相談業務に駆けつけるという制度設計が無いことも広域的な税務支援活動を妨げている。これは単位税理士会と日税連とが協議検討すれば対応策を見いだすことは可能であろう。こうした大規模広域災害に対処するノウハウの確立は、業界内部の防災意識を高めるとともに、納税者や地域社会に対する税理士界の社会公益性・公共性の向上を図ることにも通ずると考える。

Ⅲ.税制から見た被災者支援の拡充

現行税法には、大規模災害被災納税者に対する長期的支援という視点が欠落している。今後の納税者の予測可能性に資するとともに、被災納税者の復旧・復興支援に役立つ法改正及び創設を望みたい。その一例を列挙する。

  • 現行「所得税法第87条第1項」の所得控除は、まず「雑損控除」から控除するとの規定を改正し、「雑損控除」の控除順位を最後とすべきである。
  • 現行雑損控除を「一般雑損控除」と「大規模災害控除」とに区分し、「大規模災害控除」は繰越期限を定めず、無期限の控除を認めるべきである。
  • 被災納税者間の格差拡大を防ぐため、「大規模災害控除」は所得控除と税額控除の選択制とし、税額控除には「給付つき税額控除」を導入すべきである。
  • 「大規模災害控除」の適用対象者のうち、緊急な被災者支援対策を必要とする納税者に対し、所得税の繰戻し還付制度を創設すべきである。
  • 「所得税基本通達72-4(1)イ」の雑損控除の適用される親族の判定時期を改正し、その者と生計を一にする親族が雑損控除を受けやすくすべきである。