多様性について

 2024年08月28日

(第591号掲載)

 税理士会のSDGs宣言のリーフレットを拝見すると、にちぜいくんが「誰一人取り残さない。」と語っています。以下に掲げる事項はリーフレットの内容です。

 税理士会は、経済・社会・環境のバランスがとれた持続可能な社会の実現を目指します。

 経済:税務・会計・経営のプロフェッションとして、あらゆる事業の発展を支え、経済の持続的成長を目指します。

 社会:プロフェッションとしての職能を活かした社会貢献活動を通じて、すべての人が安心して暮らせる豊かな社会の創造を目指します。

 環境:地球環境と生きとし生けるものの命を守り、人の経済・社会活動を支える基盤を創ります。

 SDGs宣言において重要と成るのが多様性についての取り組みです。そして、日本税理士会連合会(以下、「日税連」)の令和5年7月27日の定期総会で新たに就任された太田会長が抱負として「価値観の多様性へ対応できる税理士会の構築」を掲げられました。そして「税理士界」第1432号で太田会長を囲んで「多様性活躍の推進について」の座談会が企画されました。紙面の最初で「会務において指導的立場を担う女性の割合を向上させるため、ポジティブ・アクションの導入を決定し、また、主に若年層をターゲットに職業としての税理士のPRに力を入れるなど、税理士業界における多様な人材の登用・増加に向けた取り組みを強化し、総合企画室に多様性活躍推進分科会を設置し、施策の検討を進めることとなりました。」と掲載され、紙面の中で太田会長は「税理士界を取り巻く多種多様な問題や課題が生じる中、日税連としてはさまざまな状況変化を想定し、組織的、戦略的な施策を積極的に実施できる組織でなければならないと考えています。」と述べられ、分科会のメンバーの話を聞き、「多様性を税理士業界というフレームの中に当てはめれば、男女共同参画や若者の活躍、働き方といった論点があると再認識しました。また、先般の第6次税理士法改正もこの多様性がテーマだったと受け止めています。例を挙げると、デジタル化についてはテレワークやサテライト等の税理士の業務執行の多様化に対するものでありましたし、受験資格要件の緩和については会計学科目の受験資格要件を撤廃することで若年層にとって門戸が広がる他、学歴要件も拡充されるなど、より多様なバックグラウンドを持つ方々に対応するものでした。」と述べ、更に「クオータ制や今後の多様性活躍推進分科会の施策により、女性や若年層の会務参画が進んだ時に、それらの方々が持っている能力を最大限発揮出来るよう、組織としての環境整備を進めなければならいということです。」と述べられています。最後に「支部の役割が重要だという話もありましたが、ぜひぜひさまざまな意見を上げていただき、それらが風通し良く日税連まで届くような環境整備を進めて行きたいと考えています。」と締めくくっています。

 そこで多様性とは何なのか、少し考えて見たいと思います。

 昨今「多様性」という言葉を聞く機会がずいぶんと増えてきました。そして多様性と言うと、次のような内容を思い浮かべるのではないでしょうか。「女性のキャリア形成支援」、「子育て支援」、「障害者の雇用支援」、「高齢者の雇用・活用支援」等。

 多様性とは、いろいろな種類や傾向のものがあること。変化に富むこと。(出典:デジタル大辞泉)です。

 では、なぜ多様性が求められているのでしょうか。多様性が求められる背景は大きく分けて2つあります。1つ目は、労働人口の減少です。日本では少子高齢化が進み、その結果として労働人口の減少も進んでいます。そこで、女性、高齢者、外国人、障害者などの新たな働き手が注目されています。2つ目は、市場における企業間の競争激化による様々な考え方の確保です。市場におけるニーズの変化が加速している現代では、同じような考えではニーズに応えるのが難しく、より多様な考えを取り入れてニーズに応えるようにします。

 さらにもう一歩深く、さまざまな社会の変化に対応するための本質的な多様性とは、何でしょうか。多様性とはつまり、マイノリティもマジョリティも相互に受け入れ、受容し、そして相互に理解し合い意見を融合させる。より別種の思考を取り入れていくこと。それが多様性なのではないでしょうか。

 相互に理解し合うからこそバランスがとれた持続可能な社会の実現へと繋がるのではないでしょうか。

 多様性につては、まだまだ始まったばかりで論点がつきないものと思います。税理界の多様性について考えるときは、やはり税理士法第1条をベースにしっかりと足腰の強い、継続可能性の高いものへと発展して行けばと思います。