人工知能について
(第614号掲載)
近頃AIという言葉を見聞きしない日はないように思われる。AI(人工知能)とは、人間が行う知的活動即ち学習・認識・推論・判断といったことをコンピュータで再現する仕組みのことです。英語でArtificial Intelligence の略称で、諸々のデータから規則性を導き、新たな状況に対する予測や判断作業を繰り返すシステムの総称です。
現在では小学生でも利用できるような普及型のAIから高度な研究開発用あるいは軍事用AIなど多種多様なシステムが稼働しているようです。そのような中で先日、米国防総省とAI提供企業アンソロピックとの対立が報じられた。国防総省はあらゆる合法的な軍事活動に利用できることを要求したが、アンソロピックは自律型兵器や統合型監視への転用リスクを排除できないとして、包括的な許可は与えられないと判断したようだ。その結果アンソロピック社は、米軍と取引する企業との商業活動を事実上禁止される措置を受け、国家安全保障上の脅威として扱われることとなる事態がおきています。
一方でオープンAIは国防総省と合意して、米軍の機密システムとしてAI技術を運用する仕組みを整えたと伝えられる。もはやAIが兵器の一部としてではなく、戦争の判断そのものにまで関わる「頭脳」として機能し始めているという事実は、想像以上に重い意味を持つものといえるのではないか。
話は変わるが、「技術的特異点(Singularity)」という用語がある。この用語の提唱者であるカーツワイル氏の言葉によれば「100兆の極端に遅い結合(シナプス)しかない人間の脳の限界を、人間と機械が統合された文明によって超越する」こととされる。
技術的特異点は、汎用人工知能等の知能増幅が可能になったときにおこる出来事で、ひとたび優れた知能が創造されたあと、再帰的に更に優れた知性が創造され、人間の想像力の及ばない超越的な知性が誕生するという仮説です。
カーツワイル自身は、2045年ころにはコンピュータの演算能力が人間の脳の100億倍にもなり、技術的特異点に到達するのに十分な知能の土台が生まれるであろうと予測しています。
技術的特異点を肯定的に論ずるものも、21世紀半ばから22世紀半ばにかけておこると予測するものが多いが、中には技術的特異点の概念は認めながらも、実現時期は遠い将来と考える論者もいるようです。
また、人工知能の進歩によって、技術的特異点のような事象は発生しないと考える論者も存在します。物理的観点、社会経済的観点、生物学的観点などからの否定的意見も多く、人工知能研究者自身からの批判的意見も聞こえてきます。
キリスト教の終末思想の中に、ナザレのイエスが再臨する際に、信者は死を経由せず直接に天国へ導かれるという思想があるそうです。技術的特異点の概念は、このような終末思想の影響を受けているとの指摘もあり、終末思想をSFの言葉で書き直した物語で、科学理論などではないという意見も出されています。
閑話休題、私たちの周りでも、AIは実際に多くの人に利用されているようだ。小中学生は日頃の学習や宿題の補助、行動の動機付けあるいは承認、高校生、大学生は論文の作成、進路相談、恋愛相談、社会人になると報告書、ビジネス文書の作成、予実管理など様々な業務に使われていると聞く。このような状態が続きAIの更なる進歩となると、AIに対する依存度がますます高くなり過ぎて、我々自身の成長に何かよからぬ影響が出はしないかと、老爺心ながら気にしている次第です。
