不況は成長のチャンス

 2021年11月15日

(第565号掲載)

 長かった新型コロナウイルスとの闘いもようやく終わりが見えてきた。ワクチンの高齢者接種は7月末までにほぼ終了し、一般の接種も11月までに完了する見込みが発表された。

 株式相場は、ワクチン普及の影響を既に織り込み、むしろコロナ後のテーパリング(量的緩和の縮小)や利上げの動向を睨みながら、神経質な展開が続いている。

コロナ後の世界は、すぐそこまで来ている。しばらくは、リベンジ消費で活況となるが、

 ユーフォリア(多幸感)に包まれたその期間を過ぎると、我々は膨れ上がった負債の大きさに呆然とする。使える金はあまり無いし、増税は必至だ。

 コロナ前に我々は何を考えていたのだろうか。実感のない好景気の継続(後に嘘だったとわかる)が伝えられるなか、急に老後は2,000万円が必要だと脅されびっくりしているうちに、予定通り消費税が10%に増税され、東京オリンピック後は不景気になるというのが大方の予測であった。コロナにより、状況は悪化している。

 バブル崩壊に始まり、失われた30年を経験した我々が政治に期待するのは難しい。仕事柄、ここは起業家の頑張りに期待したい。

 不景気で大きくなった企業は枚挙にいとまがない。最近ではユニクロ、ニトリ、アパホテルなどが良く取り沙汰される。不景気になると価格の概念がガラッと変わる。それによって競争環境が変わり、新たなマーケットが生まれる。そこに素早く走り込んだ者がその市場を獲得するというのが大まかな流れだ。

 逆張りの経営とも言えるが、日頃からの備えなくして逆張りはできない。どちらかと言えば、備えの経営だ。松下幸之助氏が提唱し、稲盛和夫氏が多大なる影響を受けたというダム式経営とも言える。中小企業が経営資源に余裕を持たせるなんてことは難しいかも知れない。しかし、松下幸之助氏曰く、ダムを作りたいと強く思わないことには何も始まらないのである。強く思えば、そのために利益率を上げる、そのために価格を上げる、そのために品質を上げる、そのために従業員を説得するなど、その手段が見えてくる。稲盛和夫氏曰く、不況に遭遇したときに、従業員が結束し、努力することによって、ひとつの「節」が作られる。その「節」が次の飛躍の足掛かりとなり、そうした「節」が多いほど、企業は立派に育って行くのだと。

 不景気は避けることができない。ならば強がりでも「不況は成長のチャンス」だと思うことから始めよう。そうすれば、やがて「不況を待つ」くらいの強い体質が出来上がるはずである。そういう企業を共に創って行きたい。