ミニ研修会報告 インボイス制度導入反対の取り組み

 2022年01月28日

(第566号掲載)

専税協議会第55回定期総会に先立って行われた、インボイス制度導入反対の取り組みに関するミニ研修会について以下報告する。講師は菅原祥元会員(麻布支部)。

東京税理士会・東京税理士政治連盟は、本年6月に令和4年度税制改正に関する要望書を公表している。この要望書では適格請求書等保存方式(インボイス方式)の導入に反対すると明示している。令和5年10月から実施が予定されている適格請求書等保存方式について、免税事業者が取引から排除されるおそれがあること、仕入税額控除の可否を判断するために増加する事務負担への対応が困難であること等の理由からその導入に反対している。

 日本税理士会連合会・日本税理士政治連盟も、令和4年度税制改正に関する重要建議・要望事項を公表しているがここでは、適格請求書等保存方式見直すとともに、その導入時期を延長することとしている。事務負担に与える影響、市場取引に与える影響などを検討し、必要な措置を講ずるとともに、簡易で安価な電子インボイス制度が整備などされるまで、導入を延期すべきであるとしている。直截的に導入反対とは言っていないが、電子インボイス制度をあげて時期を先送りし、その間に方策を講じる考えか、電子インボイス制度が免税事業者排除の観点や事務負担解消にどのような影響をもたらすのか今の段階では分からない。

 もう一つ大事な点は、軽減税率制度・インボイス制度が導入された平成28年税制改正法で令和5年10月のインボイス導入までの準備時間をたっぷり設けたという点であるが、果たして今回の新型コロナウイルス感染蔓延という事態も考慮されているかどうかだ。我々の感覚からすれば、当然にこの事態は想定外であり、事実、感染症の性格からして周知が困難な状況であること、仮に制度の趣旨を理解していたとしても、免税事業者は廃業に追い込まれ、または検討し、課税事業者であっても令和2年や3年の課税売上高が1,000万円を下回る事業者は課税選択の判断基準があまりにも難しすぎる。つまりコロナの影響はインボイス制度導入により影響を受ける事業者と被るのだ。少なくともこのような状況では予定どおり施行されることに異議を唱えたい。ただし延期したところで①免税事業者排除の問題と②事務負担の問題が残る限り導入すべきでない。現状の区分記載請求書等保存方式で十分に対応できる。すでに法律で決まったことという意見もあるが、平成28年税制改正法附則171条2項は、消費税の軽減税率制度導入後3年以内を目途に、適格請求書等保存方式の導入による事業者への様々な影響等、軽減税率制度導入に伴う経過措置の適用状況等を検証し、必要があると認めるときは、法制上の措置その他の必要な措置を講ずるものとすると規定している。軽減税率制度・インボイス制度反対の税制改正要望の唯一の法的根拠である。消費税率10%・軽減税率制度導入は令和元年10月であるので、導入後3年以内は令和4年9月になるが、令和3年10月から「適格請求書発行事業者」の登録申請の受付が開始される。このように適格請求書等保存方式の導入に先立って、その準備手続きが具体的に始まってしまう。制度導入の前に諸手続きが動き始めると、その動きを制止することは困難であることは、数多くの事態で明らかである。インボイス制度導入に反対する最後の機会は、『今でしょ!』。