イノベーションの挑戦者、中小企業を支える税制の提言を

 2022年10月07日

(第571号掲載)

 オミクロン株が依然猛威を振るっている。他国の状況等を鑑み、これで収束するだろうとの期待感もあるが、これが最後の変異型だと考えるのは危険だとWHOが釘を刺す。ウイルスの進化は予測できないため、対応力を高めるしかない。

 世界経済においては、目の前のインフレへの対応が最大の関心事だ。各国中央銀行の利上げ観測を受け、年明けの株式相場は全世界的に下落基調で、東京市場も大幅な下げに見舞われている。

 そんな中、日本の証券各社は米国株の取り扱いに力を入れている。コロナ禍をきっかけに投資を始めた人も多いが、若年層の新規参入者のなかには、日本株には見向きもせず、米国株で投資家デビューする人も多いという。日本人が日本企業に期待できないというのは悲しいことではあるが、過去のパフォーマンスを見る限り致し方ない。むしろ、そういった利に敏い若い投資家が虎の子を預けたくなるような日本を我々は目指すべきであろう。

 政権が掲げる「新しい資本主義」は、いまひとつ中身が見えてこない。人を教育し、付加価値の高い財やサービスを生み出し、労働生産性を向上させ、賃金を増やす。言ってることは正しくとも、過去数十年に渡って実現できなかったことが急に実現できる理由がない。政府が目を付けた分野に金を配れば、そこからスターが生まれるというものでもない。日本が資本主義社会で負け続けている理由は、イノベーションが起こりにくいからである。そして、それは予測できないところから生まれる。よって、必要なのは予測できないものを生み出す「顔の見えない無数の挑戦者」の存在である。

 我々の顧客である中小企業は、挑戦者そのものである。本来であれば、その挑戦を後押しするような政策が実施されるべきであるが、消費税の複数税率、インボイス制度の導入、電子帳簿保存法の改正など、中小企業の生産性を低下させ、キャッシュフローを悪化させるような改正が続いている。今年はインフレ、円安、燃料高、原材料高、人手不足など、中小企業にとっては厳しい1年となることが予想される。更に税制が、中小企業経営の重しとならぬよう、提言を続けていきたい。