未知との戦い ~デジタル化~

 2022年02月21日

(第567号掲載)

 今年の梅雨明けは平年より若干早かったものの、8月は異例な長雨、9月に入ってからすっかり秋めいた。緊急事態宣言下とはいえ、短い夏に寂しさを感じる。新型コロナウイルスの感染者数も8月半ば5,000人を超え、9月に入ると一気に減少していった。原因については、ワクチン接種が進んだ、8月の長雨により行動制限があった、ウイルスの生存戦略説と、諸説あるようだが、実のところ分からないといったところか。ウイルスという見えない敵との未知との戦いである。いずれにしても第6波への備えとして、引き続き感染症対策はしっかりとしたい。未知との戦いといえばデジタル化もその一つだ。時代に取り残されまいと突き進むこの国のデジタル化とはいったい何を目指しているのだろうか。デジタル技術やデータをもとに新しい価値を創造していくことは大事なことであるが、単にアナログからデジタルへ、ペーパレス化というものであれば、全国民が影響を受ける話である。日本の文化や慣習についても慎重に考え、事を運ばなければならない。デジタル化による便利さとプライバシー保護はトレードオフの関係にある。便利さを追求すればプライバシーが晒されるリスクが増し、プライバシーを重視すれば不便さを受け入れなければならない。国民はどちらを望んでいるのだろうか。両極端でないにしろ、このようなデリケートな課題は政府が国民や納税者の利便性のみをもって、なかば一方的に政策を進めるべきでない。国民にとって真に大切なものは何かを見極めなくてはならない。マイナンバーに例えれば、年金番号、健康保険証、免許証、パスポート…、番号を統一すれば利便性は増すが、プライバシー侵害、情報漏えいのリスクも懸念される。それぞれ個々の番号に意味はないが、集約されれば統一番号そのものに価値がでてくるのだ。結局のところ、どんなにセキュリティ技術が完璧だといわれたところで、バラバラの番号であることが最大のリスクヘッジになっているのではないか。