令和2年 新春専税研修会
令和2 年1月11 日(土)、アルカディア市ヶ谷において、「令和 2 年度の税制改正⼤網」について新春研修会を行いました。
コーディネーター : 高橋千亜紀(本郷⽀部)
パネラー: 菅原祥元(⿇布⽀部) 青木久直(日本橋⽀部)
昨年12月に令和2年度の税制改正大綱が与党自民党・公明党から発表されました。専税協議会では速報として、その大綱の内容を税目ごとに確認し、今後の税理士としての業務に役立つ項目について解説がなされました。構成としては、税目やテーマごとに、(1)個人所得課税 (2)法人税関連 (3)不動産・資産課税 (4)消費課税 (5)その他納税環境整備等というように分けて、話が進められました。以下、改正の概要。
(1)個人所得税
○未婚のひとり親、寡婦控除 → 個人所得課税では昨年の大綱で最後まで決着がつかなかった、いわゆるシングルマザーについて寡婦(夫)控除が適用されました。併せて寡婦(夫)控除の見直しが行われました。令和2年分以後適用。
○住宅ローン控除の縮減 → 新規住宅の居住年から3年後に従前住宅を譲渡した場合において、その譲渡について譲渡特例の適用を受けるときは、新規住宅について住宅ローン控除の適用ができないこととなりました。令和2年4月1日以後に従前住宅の譲渡より適用。
○国外中古建物の損益通算 → 不動産所得の金額の計算上生じた損失の金額のうち、耐用年数を簡便法により計算した国外にある中古の建物の「減価償却費に相当する部分の損失」については、生じなかったものとみなし、損益通算等ができないこととなりました。令和3年分以後適用。
○国外親族の扶養控除 → 適用できる年齢が16歳以上29歳以下、70歳以上になりました。ただし、留学生、障害者38万円以上の送金が確認できる者は適用できる。令和5年以後適用。
(2)法人課税
○オープンイノベーション税制 → 一定のベンチャー企業に出資した場合、その株式の取得価額の25%相当額の所得控除が認められます。特別勘定として経理した金額を限度。ただし譲渡した場合等は益金算入。令和2年4月1日から令和4年3月31日までの間に取得。
○連結納税制度の見直し → グループ内において損益通算を可能とする基本的な枠組みを維持しつつ、親会社、完全子会社のそれぞれが申告・納税を行う「グループ通算制度」に見直されました。グループへの加入時の時価評価課税や繰越欠損金の切捨ての対象を縮小するなどの見直しも行われます。令和4年4月1日以後に開始する事業年度より適用。
○適用期限延長 → 交際費、繰り戻し還付、少額減価償却資産の取得価額の損金算入特例制度がそれぞれ2年間延長されました。
(3)不動産・資産課税
○所有不明土地 → 登記簿上の所有者が死亡し、相続登記がされるまでの間において、現に所有している者(相続人等)に対し、市町村の条例で定めるところにより、氏名・住所等必要な事項を申告させることができることとなりました。また、市町村は調査を尽くしても所有者が一人も明らかとならない場合、使用者を所有者とみなして固定資産税を課すことができることとなりました。令和3年度分以後適用。
○未利用土地の譲渡 → 保有期間5年超、建物等を含めた譲渡対価が500万円以下の低未利用土地等を譲渡した場合において100万円の特別控除ができることとなりました。令和2年7月1日又は土地基本法等改正の施行日のいずれか遅い日から令和4年12月31日までの間の譲渡。
○配偶者居住権 → 配偶者居住権等が消滅等した場合の譲渡所得の金額の計算上控除する取得費の計算方法が示されました。
(4)消費課税
○消費税の申告期限の延長 → 働き方改革関連法が順次施行されることに伴う等、企業の事務負担の軽減に資するよう、消費税も法人税と同様に申告期限の一ヶ月延長が認められることとなりました。令和3年3月31日以後終了する事業年度の末日の属する課税期間から適用。
○居住用賃貸建物の仕入税額控除の適正化 → 居住用賃貸建物の取得に係る仕入税額控除の計算を適正化し、建物の用途の実態に応じて計算するよう見直されました(取得時の仕入税額控除を制限)。令和2年10月1日以後に行う仕入について適用。
(5)その他納税環境整備等
○振替納税の通知電子化
○準確定申告の電子化
○納税地異動の場合の振替納税
○電子帳簿等保存制度の見直し
○国外財産調書
○医療費控除の適用を受ける際の確定申告書の添付書類について