「電子投票のあり方に関する常務理事会意見交換会の結果報告に関する件」の報告を受けて
(第572・573合併号掲載)
3月17日の支部長会・理事会において、「電子投票のあり方に関する常務理事会意見交換会の結果報告に関する件」が報告された。令和4年役員選挙における支部ネット投票の実施に向け、執行部ではさらに検討し、必要な措置を講じるということになったそうだ。この「支部ネット投票」とは会員が支部に出向いて支部のパソコンで投票を行うというもので、今まで検討を重ねてきた「ネット投票(=ホームページ投票)」とは似て非なる全く別のものである。
そこで、本会役員選挙の投票率の推移と選挙制度に関する本会プロジェクトチーム(PT)の答申などについて振り返り、支部ネット投票導入に対する考察を加えてみたい。
<平成22年12月 副会長選挙 投票率37.4%、平成28年4月 会長補欠選挙 投票率25.5%>
平成28年より選挙制度検討PT(吉川座長)を立上げ、選挙規則等にていて検討され、後に副会長の定数が5人から7人に変更されたが、ネット投票は時期尚早との答申があった。
<平成30年12月 副会長選挙 投票率34.7%>
平成30年の役員選挙の投票率が著しく低かったことから、令和元年12月の選挙関係PT(吉田座長)の答申においては、投票率の向上と会員の利便性向上のためネット投票を導入し、補完的に郵便投票を選択可能とすべきとした。東京司法書士会でのネット投票導入について、約1年かけて準備して導入した結果、導入前30%だった投票率が導入後の平成29年選挙では51.8%となったことが報告された。この間、理事会においてネット投票(=ホームページ投票)のデモンストレーションが行われ、技術的には問題がないことが実証されている。
令和2年10月ネット投票検討PT(山崎座長)では、さらにネット投票の問題点に検討を加え、特別規則等の制定をすべきこと、会員に対して行った意識調査で回答者の98%がネット投票に賛意を示していること、ネット投票も会務ICT化の一環として位置づけられ、会員のホームページのメールアドレス登録が80%以上あることなどからホームページ投票及びその補完として郵便投票が最善と認め、その推進を図るべきとの答申があった。また、費用面での検討もなされ、システムでは構築費は754万円、運営費86万円の合わせて840万円、郵便投票では144万円と概算984万円と算出された。ホームページ投票導入までのロードマップ案も示され令和4年12月の実施となっていた。さらに、その実現のためには総務、情シス、組織、広報、選管、ブロック別の支部長などからの委員を構成メンバーとする分掌機関にて検討すべきとの方策も示された。
<令和2年12月 会長・副会長選挙 投票率30.3%>
そして令和元年12月のネット投票導入の答申から2年と3ヶ月を経て報告されたのが、冒頭の「支部ネット投票」を今年の12月に導入するというものである。「支部ネット投票」とは、今までの議論には全く出てこなかった案であり、令和3年10月からの3ヶ月間で5回常務理事会において意見交換を行ったそうだが、今までの長い年月をかけて沢山の方々が議論してきたことは何だったのかと思わざるを得ない。
最終的にはパソコンから投票はするので、確かに集計作業等の効率化にはなるかもしれないが、投票するために支部に出向かなければならないので、肝心の投票率の向上には全く寄与しない。
まずはシステム構築後に実証実験をし、支部ネット投票を導入して定着した後に選挙規則の検討を経て将来的にはホームページ投票を導入する予定だそうだが、ロードマップも示されておらず、また何年先になるのだろうか?費用的にもシステム構築1,110万、運営240万、計1,350万かかるそうで、令和2年答申時の総額を上回っている。
「支部ネット投票」は今年の12月には導入されるということだが、今までのPT等では「支部ネット投票」については議論されていないし、理事会等でも一切報告がなかった。今後の理事会での十分な議論が期待できない。なぜ、何年も放おっておいたものが、急にこんなにも急ぐのだろうか?今までのPTでの議論を踏まえて、「支部ネット投票」ではなく、ネット投票(=ホームページ投票)を分掌機関などにおいて論点整理を行い理事会で議論してからの導入というのが正しい筋道ではないだろうか?
ネット投票導入の目的である投票率の向上は、会員の会務参加率の向上とも結びついている。役員選挙への参加は会員の会務参加への入り口ともなり得るはずである。低調な投票率を改善できずにいる会の目指すところは何処を目指しているのか。