税務調査における帳簿書類等のデータ提出について

 2026年10月16日

(第616号掲載)

 最近の税務調査で、事前通知で示された調査開始日よりも前に会計データ等の提出を求める事例が見受けられ、これについて6月に国税庁側から日税連に対し周知依頼があった。その文書としては、1.「実地調査における帳簿書類等に係る電子データの提供依頼について」、2.「税務調査において提出を受けた電磁的記録の取扱について」というものであった。

 上記1については納税者の理解と協力を促進するため国税庁のHPに記載し、上記2については税務署において交付し説明する予定となっているそうだ。

 上記1の文書では、「税務調査においては納税者の状況を踏まえ帳簿書類等に係る電子データの提供をお願いする場合があります。※帳簿等の提供を依頼する行為は、質問検査権に基づくものとなります。納税者から帳簿書類等のデータ提供を臨場前に受けた場合には、これまで臨場時に実施していた帳簿等の確認作業の一部について、取得したデータを活用して税務署で実施することが可能となるため、税務調査の効率化が図られ、納税者や税理士の負担軽減にもつながります。なお、提供を受けた電子データは、情報保護の重要性の観点に鑑み、国税庁において定めた行政文書管理規則に従って厳格に取り扱われます。※電子データの提供を受けた際は、国税当局における当該電子データの取扱いを明らかにした文書を交付するなどの取組を、令和8年7月から実施する予定です。」との記載がある。

 税務調査の開始は臨場開始の日であって、質問検査権は当然にその日から効力を発生する。帳簿等のデータ提供が質問検査権に基づくものであれば、調査開始日以降でなければならない。税務行政の効率化等からの観点で開始前にデータ提供を依頼することは、何に基づいて行われているのであろうか。データ提出依頼に納税者側が応ずるか否かが任意であることも記載すべきではないか。

 上記2の文書では、「提出いただいたデータ(電磁的記録)については、国税庁において定めた行政文書管理規則等に従い厳重に管理を行い、保存期間が満了した後は、同規則に基づき確実に消去します。また、国税職員がUSBメモリ等にデータを保存した場合、必ず暗号化処理等を施して外部への情報漏えいを防止するとともに、保存の必要性がなくなり次第国税庁において速やかにデータを消去します。」とある。

 国税庁の行政文書管理規則は、平成23年から改正されておらず、果たして現在の状況に即しているのであろうか。当該規則の中で別表第1に行政文書の保存期間基準として、内国税の賦課及び徴収の実施に関する事項で、内国税の課税標準又は税額の決定に関する決裁文書及びこれらに関する重要な経緯が記録された文書を、国税の更正、決定等の処理を行うことができる期間保存すると定めている。また、別表第2の保存期間満了時の措置の設定基準で保存期間満了時の措置として廃棄することとなっている。国税の更正、決定等の処理を行うことができる期間とは、国税通則法第70条に原則としては申告期限から5年以内と定められている。

 調査の結果、更正決定等をすべきと認められない場合は納税義務者又は税務代理人にその旨を書面により通知し、また、更正決定等をすべきと認める場合は修正申告等の勧奨や申告書を提出した場合に不服申立てはできない旨の書面を交付することになっているので、それとともに納税者が提供したデータを廃棄(消去)した証明書も交付していただきたい。使用しなくなったパソコン廃棄の際にデータ消去証明書を発行してもらう方も多いと思うが、これがないと情報漏洩リスクの懸念が続いてしまう。また、税務職員がUSBメモリ等にデータをコピーして使用することがあるとの事だが、USBメモリやそれを使ってコピー等したモバイル端末において、少なからず情報漏洩問題が起きている事実もあるのでこれは禁止にしていただきたい。ネットワーク上でデータを共有することが可能なはずである。

 いずれにしろ、きちんとした法的根拠がないような要請や依頼は、租税法律主義の観点から望ましくなく、法的整備を望みたいし、税理士会も要望をしていくべきである。また、主要先進国で唯一制定されていない納税者権利憲章の早期の制定も望むところである。