デジタルインボイスとは

 2024年08月28日

(第588号掲載)

 10月1日、適格請求書等保存方式がスタートした。従前の請求書等保存方式から区分記載請求書等保存方式を経て、適格請求書等保存方式になった。同時に、新消費税法57条の4⑤により、電子版適格請求書等即ち電子インボイスも導入された。

 今年6月に国税庁から公表された「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション―税務行政の将来像2023―」に掲げられた、①納税者の利便性の向上、②課税・徴税事務の効率化・高度化等、③事業者のデジタル化促進の3つの柱からも、電子インボイスシステムを指向していることが窺える。

 電子インボイス、あるいはデジタルインボイスとも言われるが、これらは同じものなのか、異なるものなのか。今月の東京税理士界の記事から引用すると、ChatGPTの回答として以下が紹介されていた。「電子インボイスとデジタルインボイスは、ビジネスの請求書や取引文書を電子形式で送受信する方法ですが、それぞれ異なるアプローチを持っています。電子インボイスは、紙の請求書をスキャンやPDFなどの電子フォーマットに変換して送信する方法を指します。これは従来の紙ベースの請求書を電子化したもので、データを電子的に共有する便益がありますが、データの構造やフォーマットは通常変更されず、手作業で情報を抽出する必要があることがあります。一方、デジタルインボイスは、請求書のデータ自体が構造化され、機械可読な形式で送受信される方法です。通常、EDIやAPIを使用して、情報が自動的に処理され、会計システムやERPシステムに直接統合されることがあります。デジタルインボイスは誤りや手作業のミスを減らし、効率的なビジネスプロセスを実現します。」つまり、デジタイゼーションと、デジタライゼーションの違いと理解できる。

 そうすると、今後は電子インボイスではなく、デジタルインボイスシステムへのシフトが求められるのだろう。上述の「税務行政の将来像2023」では事業者のデジタル化促進の項で、事業者の業務のデジタル化の概念図を載せている。これによればPeppolと表示されたネットワークを通じて、デジタルインボイスを遣り取りする構造が描かれている。

 このペポルとは、Pan-European Public Procurement online の略で、政府公共調達をする際にデジタルインボイスを使うように用意された基準で、その後事業者間取引にも利用されるようになった国際的基準である。我が国のデジタル化は、デジタル庁が音頭をとって勧めている。デジタル庁は、国際機関であるオープンペポルの会員となり、日本におけるペポル規格の認証機関の役割を担っている。2020年7月に発足した電子インボイス推進協議会(エイパ/EIPA)は、2022年6月に名称をデジタルインボイス推進協議会と改め、デジタル庁の後押しを受けて、ペポル式デジタルインボイスシステムを推進している。会計ソフトベンダーを筆頭に一般事業会社、大手税理士法人など200社近い会員を擁し、日本税理士会連合会も特別会員として参画している。代表幹事は株式会社TKCである。

 新消費税法により導入された電子インボイスもこのペポル式デジタルインボイスシステムに依ることになる。消費税課税事業者を中心とする各事業者は、このペポル式システムのアクセスポイントを経由して、デジタルインボイスデータをやり取りすることになる。つまりデジタルインボイス推進協議会参加企業の用意するアクセスポイントを利用することになる。

 このネットワークに連携することによって、事業者のバックオフィス業務を含めたデジタル化を促進し、納税者の利便性の向上を図り、もって課税・徴税事務の効率化・高度化等に資することが、税務行政の将来像2023に書かれている。