日本経済動向と消費税増税の因果及びインボイス制度開始への思い

 2022年12月12日
日本経済動向と消費税増税の因果及びインボイス制度開始への思い

鴨川大山千枚田

(第575号掲載)

 6月2日、米電気自動車大手テスラのCEOイーロン・マスク氏が「経済環境について、とても悪い予感がする」として、新規雇用の中止と人員削減の必要性を幹部社員に示した。翌日の株価急落を受けて、翌々日には撤回するような姿勢を見せたが、同じような考えを持つ経営者は多いだろう。新型コロナやウクライナ侵攻から派生した問題等が絡み合い、世界経済の回復力は低下している。日本もその例外ではなく、小さな負荷が日本経済の思わぬ衰退を招く可能性も考慮すべきだ。

 日本経済衰退の歴史は、消費税増税の歴史と重なる。消費税の創設はバブル経済真っただ中であったため負の影響はかき消されたが、バブル経済をハードランディングさせた後、不況下で行われた1997年の5%への増税は、今日まで続くデフレ経済がスタートする契機の一つとなった。2014年の8%への増税では、リーマンショックによる不況以来のマイナス成長(▲0.4%)となり、2019年景気後退局面での10%への増税では、新型コロナウイルスの影響も重なって前回増税時を超えるマイナス成長(▲0.7%)となった。

 消費税増税は今の生活を直撃するだけではない。一生涯の可処分所得がその分減るのである。過去に貯めた預金の価値さえ強制的に減ってしまう。理性的な個人は、将来の負担増に対応し、消費を先延ばしする。その行動は褒められこそすれ、責められるところは微塵もない。しかし、その行動が日本経済を停滞させてしまう。個々人の正しい行動が、望まない結果に繋がるのであれば、それはシステムに問題があると言わざるを得ない。

 来年10月にはインボイス制度が始まる。既に大企業による免税事業者排除の動きが顕在化しており、やむを得ず課税事業者を選択する中小企業にとっては大きな増税となる。その影響はそこで働く従業者の生活を直撃し、これもまたデフレ不況を深化させる。 繰り返される悪手に対して、政治家が悪い、官僚が悪いというのは簡単だが、問題の原因を他人に帰すると、人は思考停止になる。政治家、官僚、国民がそれぞれの善意に従って努力した結果、今の日本がある。問題は人ではなく、為政者と国民の分断である。国民が為政者に寄り添うべく、投票だけではない、国民の政治参加が重要性を増している。