(研修)「平成30年度の税制改正大綱」について検討する

/平成30年1月20日(土)於:アルカディア市ヶ谷(私学会館)

パネラー:宮本雄司(本所支部)、坂田覚(板橋支部)、菅原祥元(麻布支部)

平成30年1月20日にて、アルカディア市ヶ谷にて専税協議会が行った「平成30年度の税制改正大綱」の研修について、今後の税理士業務に関係あるところを中心に税制改正大綱の中身を検討いたしました。

具体的には、働き方改革と所得再分配、事業承継税制の緩和措置、電子申告の推進と普及、小規模宅地等の特例、所得拡大促進税制といったこと中心に検討いたしました。

 

1.サラリーマン課税等(所得税)の変更がどのようなものなのか?

先般、報道等によって税金を取りやすいところからとるという指摘があったが、その背景は次のようなものである。

キーワードは所得再分配、働き方の多様化(給料、フリーランス、在宅など)。働き方によって、事業、給与、雑と異なっているが、その所得種類によって税額を解離させない、近づけるという理念がある。

以下、改正の概要としては、大きく分けて4つのポイントがある。

  1. 給与所得控除・公的年金等控除から基礎控除へのシフト。
  2. 高所得者について給与所得駆除を引き下げ。
  3. 年金以外に特に高額の副収入がある者について公的年金等控除を引き下げ。
  4. 特に高額の所得がある者について基礎控除を逓減・消失。

☆働き方の多様化

給与所得控除が過大なのではないか?(財務省主張)という点が挙げられるが、今回は、給与所得控除のうち10万円を基礎控除に振り分けることで、事業や雑に所得計算上の恩恵を与えている。

また、給与所得控除から基礎控除へ10万円を振り分けるので、給与所得者にも基礎控除での10万円分の控除を受けられるので、いってこいになる。

☆所得再分配の見直し

日本では少子高齢化に伴い、以前の終身雇用から年金生活者というスライドになるということが少なくなり、働きながら年金も受給する生活になってきている。給与+年金という収入以外にも、不動産収入+年金といった年金とプラスアルファの収入があるので、その部分の再分配機能を高めようと考えている。

したがって、公的年金控除から基礎控除への振り分けが行われた。加えて、現状の所得税の計算方式では、高額所得者ほど、所得控除の恩恵があるので、特に高額の所得がある者については、基礎控除を逓減・消失させる。

改正では基礎控除は現状の38万円から48万円に課税の最低が引き下げられるのに対して、高所得者には、所得控除の恩恵をさせない改正となっている。

☆給与所得者について

具体的には、控除額が頭打ちとなる給与収入を850万円超に引き下げるが、子育世帯(22歳以下の扶養親族が同一生計内にいる者)、介護世帯(特別障害者控除の対象者が同一生計内にいる者)には負担が生じないように手当を行う。

☆年金受給者について

①公的年金等収入が1,000万円を超える場合の控除額に上限を設ける。

②年金以外に特に高額の副収入(1,000万円超:0.5%)がある年金受給者の控除額を引き下げる。

☆給料と年金の両方の収入がある方や子育世帯、介護世帯について

給与所得控除と公的年金等控除のそれぞれから10万円ずつ控除されるので、合計20万円の控除減になるものの、基礎控除は10万円上がることになる。

この場合には、所得金額調整控除にて調整が図られることになる。

☆基礎控除の逓減・消失について

給与所得控除、公的年金等控除から基礎控除へ振替をするだけなので、基本的には増税にはならないが、所得金額調整控除の対象外にならない、子育世帯、介護世帯以外が増税になる。

☆基礎控除が使えなくなる(消失)ライン

合計所得金額2,500万円超からは基礎控除が廃止になる。合計所得金額2,400万円から段階的に基礎控除が逓減していくことになる。

高額所得者は、給与所得控除が下がり、基礎控除も下がるということになる。基礎控除の消失については、憲法25条の生存権からの理念、所得再分配機能と応能負担原則からの理念がある。後者の理念からすると、違憲にはならない。

☆上記の適用時期

平成32年分以後の所得税及び平成33年度分以後の個人住民税について適用する   こととなる。

☆青色申告特別控除の改正について

控除額を55万円(現行:65万円)に引き下げる。しかし、電子帳簿を作成して備付けと保存を行うか、期限内申告で電子申告をすることで65万円控除になる。電子申告をしない人は、55万円に下がることになる。

 

2.事業承継税制

(1)事業承継税制概要

①入口の要件の抜本緩和

総株式の最大2/3⇒全株式が対象、猶予割合80%⇒猶予割合100%。

承継後5年間平均8割の雇用維持が必要⇒雇用要件は弾力化(一定の場合には、認定支援機関の指導助言)。今までだと、猶予できる割合は80%×2/3=53.33%であった。今回の改正で、猶予できる対象が100%になった。今まで一番厳しかった要件である雇用要件が緩和された。ただ、認定支援機関でないと事業承継税制が使えないことにもなっている。

(2)具体的な改正の内容と例示

①承継後の負担の抜本軽減、経営環境変化に対応した減免制度

会社を譲渡(M&A)・解散した場合には、税額を再計算⇒税負担に対する将来懸念を軽減。

例:贈与相続時の税額4,800万円、解散譲渡時の税額3,700万円、差額の1,100万円を免除する

②5年以内の承継計画の届出

・後継者指名や経営の見通し等。

・金融機関その他の認定支援機関の指導助言。

③10年以内の贈与・相続が対象

その後の猶予期間も含めて特例が適用される。したがって、平成30年から10年間の特例制度。

④承継パターンの拡大

複数人⇒1人、1人⇒最大3人(代表者)も事業承継税制の対象とする。

例:兄弟で会社をやっている場合など、複数での対応が可能となる。

⑤相続時精算課税と事業承継税制

特例後継者が推定相続人以外の者となったことで、他人でも事業承継の道が開け、相続時精算課税の適用を受けることができるようになる。

⑥一般社団法人に関する課税の強化も導入された。

⑦導入開始時期

平成30年1月1日から適用になる。

 

3.小規模宅地等の相続税の課税の特例に関する改正

(1)家なき子特例に課税強化

持ち家がなくても、同族会社の社宅に住んでいる場合等には、家なき子特例から除外されることとなった。形式的な要件を無くして、実質的な所有の有無での判断となる。

(2)貸付事業用宅地等に課税強化

貸付事業用宅地の範囲から、相続開始前3年以内に貸付事業の様に供されている宅地が除外されることになる。

(3)適用開始時期

平成30年4月1日以後に相続又は遺贈により取得する財産について適用になる。

 

4.法人税関係に関する改正

(1)所得拡大促進税制

①中小企業に関する改正について

【要件の変更】

平均給与等支給額が前年比1.5%以上の増加(前期との比較のみとなった)

【税額控除】

・給与等支給総額の対前年度増加額の15%の税額控除になった。

・10%の上乗せ措置も追加(次のいずれの要件を満たす場合)

-平均給与等支給額が対前年度2.5%以上増加。

-教育訓練費増加要件を満たす場合。

・上記15%と10%の上乗せを含めると⇒最大で25%の税額譲渡なる。

・ただし、税額控除限度額は法人税額の20%が限度。

※教育訓練費増加額等の要件:次のいずれかの要件

①当期の教育訓練費≧前期の教育訓練費の1.1倍。

②中小企業等経営強化法の認定に係る計画における経営力向上の証明。

 

5.注目されている改正点

(1)情報連携投資等の促進に係る税制の創設

(2)法人税における収益の認識等についての措置について

(3)納税環境整備(大法人の電子申告の義務化へ)

(4)国際観光旅客税の創設

(5)消費税の簡易課税(農業所得の区分が第3種事業から第2種事業に変更)

 

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