「論」税理士業務とAI

(税界展望 第530号)2018年(平成30年)2月8日

年末調整の一連の業務が終了する1月末に、今後AIを会計業務でどのように利用していけばいいのかを考えてみたいと思う。住民税の特別徴収を徹底するということで今後は、零細企業も住民税を給与から天引きせざるを得なくなってきた。給与支払人数が2名以下であれば東京はまだ普通徴収を認めるようであるが、他県では給与支払人数が1名であっても特別徴収を徹底するということである。普通徴収では住民税の徴税コストがかさむのだろう。会社に住民税相当の給与の差し押さえ通知が来るという話もよく聞く。市区町村としては、徴収そのもののコストも会社に負ってもらいたいということが本音だろう。

また社会保険に加入していなかった零細企業は年金事務所から加入を促され、多くの零細企業が加入することとなった。加入はもちろん義務であるのだが、社会保険料を自分で計算して給与を支払うことのできない零細企業が続出した。源泉所得税の計算のように毎月の給与の額で社会保険料の控除額も決まると思っている経営者もいて、給与の支払額が間違っているのを訂正するのにも苦労をした。今後はこれに住民税の控除が加わる。所得税は国に対しての一か所の支払いだから間違いようがないが、住民税は複数の支払先となるので、支払いを間違えると預り金勘定が一致しなくなり、後でのチェックが大変になってしまう。更に従業員が退職した場合には、給与所得者異動届出書を作成できない会社も多いだろう。いままで会計事務所は従業員が退職した際に連絡をもらうことは少なかったと思う。今後は会社で異動届出書を提出できるように指導したいのであるが、めんどうくさいので先生のところでやってもらえませんか。という要望がすでに2社ほどでてきた。記帳代行業務から自計化へ移っていったのと同様に、給与計算業務もタイムカードからICカードを利用することによって業務時間の短縮が図られている。会計ソフトのベンダーも給与計算がいかに不効率に行われているかが分かっており、会計事務所が年末調整、給与支払報告書の提出までをスムーズに進められるようソフトウェアの開発が進んでいる。

しかしである。一番の問題は少人数の従業員しかいない零細企業の給与計算が問題なのである。ある程度の規模の企業はすでに給与計算は自前でできている。今後は会計事務所が給与計算のチェックもしていかなければならいため、税理士報酬がそれほど望めない会社ほど手間がかかることになる。

本来零細企業などでAIを利用して業務の効率化を図りたいところなのであるが、実際にはなかなかアナログから脱却できない。例えば銀行取引はネットバンキングを行っていれば自動的に取引を仕訳に取り込むことができるのだが、法人の場合にはネットバンキングの利用料金は月2,000円かかる。これが高いということで零細企業には導入されない。さらに給与計算などもクラウドで行えるソフトが登場しているが、1人会社の場合には月々450円の利用料でも「エクセルで自分でやってみる」ということで利用してくれない経営者もいる。そのエクセル計算も間違っていたりして、年末調整を考えれば結局会計事務所が1月から12月まで給与データを再度入力しなおすことになる。小規模な飲食店はアルバイトの計算だけでも大変である。コクヨの手書きの給与明細が売られているが、源泉・社保・住民税を計算して記入するだけでも手間である。現在での解決策としては料金はかかるがクラウドの給与ソフトにすることが一番であると思う。何とかこちらに移動してもらえるよう提案しているところである。また給与計算だけではない。来年には消費税の軽減税率が始まる予定であるが、また零細企業の記帳業務に滞りが起こるに違いない。本当に導入はやめてもらいたいものである。

AIが会計事務所の仕事を奪うという話は有名であるが、お客様がAIを利用して業務の効率化を進めていくには、会計事務所の最初のサポートが重要である。常にサポートし続ける必要はなく、とにかく使えるようになってもらうことである。零細企業にAIが浸透して会計業務が自動化されれば、会計事務所の職員が大半の時間を費やしている業務はなくなることになる。これと税理士業務がAIでなくなることとは別の問題である。会計事務所の職員の採用は困難を極めているので、AIの力をつかって極限まで業務を効率化することで人材不足を補っていくことになるだろう。

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