「論」税理士法第40条「事務所の設置」

(税界展望 第529号)2018年(平成30年)1月19日

税理士法第40条は「税理士及び税理士法人は、税理士業務を行うための事務所を設けなければならない。」とし、同条第3項で「税理士は、税理士事務所を二以上設けてはならない。」と定めている。この場合の「事務所」とは、継続的に税理士業務を執行する場所をいい、該当するか否かは、外部に対する表示の有無、設備の状況、使用人の有無等の客観的事実によって判定する(通達40-1)とされている。

二個所事務所の禁止は、昭和55年改正で定められたものだが、ちなみに改正前の第40条は、第1項で「税理士は、税理士業務を行うための事務所を設けなければならない。」と規定し、第2項では「税理士は、税理士業務を行うための事務所を二以上設けてはならない。但し、特に必要がある場合において、大蔵省令で定める手続きにより国税庁長官の許可を受けたときは、この限りでない。」とされていた。つまり二個所目の事務所は公認されていたのである。

事務所の設置を義務付けるのは、税理士又は税理士法人でない者による税理士業務の提供を排除し、国民誰もが安心して税理士又は税理士法人の門戸を叩くことができるよう、その利便に資するためと解説されている。

また、税理士一人一事務所に限ることの趣旨は、税理士の業務活動の本拠を一個所に限定することが、法律関係を明確にする上で便宜であること、及び個人の監督能力を超えて業務の範囲を拡大することを事務所の面から規制し、これにより税理士以外の者が税理士業務を行うことを防止することにあるとされている。

ここで言う税理士業務は、税理士法第2条第1項に規定する、税務代理、税務書類の作成、税務相談を意味し、税理士の独占業務(第52条)である。
従って税理士業務を行うのは税理士であり、税理士が税理士業務を行うにあたっての執務場所については、税理士法は何ら制限はしていない。自己の税理士事務所は当然のこと、顧客先でも、税務相談会場でも、時に繁忙等のため自宅へ仕事を持ち帰って行うことも差支えはない。

ただし、自宅で執務することが常態化し、自己の事務所へは必要な時だけ出かけるような状況になった場合は事務所の変更登録の手続きを行う必要がある。

一方で、税理士が、税理士業務を行うため使用人その他の従業者(以下職員等という)を使用することがあるが、職員等が行う業務は、税理士業務そのものではなく、その補助業務と考えられている。この場合には使用者たる税理士に、税理士業務の適正な遂行のために、職員等を監督する義務(第41条の2)が生じる。この条文も昭和55年の税理士法改正で新たに設けられたもので、税理士法人にも準用される。

当時の衆院大蔵委員会における審議のなかで、使用人監督義務規定に関して概ね次のような質疑応答があった。

野党議員:

依頼者やあるいは対外的な迷惑をかけた場合には、これは民法の使用者責任で、内部的には、就業規則や雇用契約上の問題として、民法、労働法の範囲内で賄えるはずであります。なぜ41条の2が特に新設されたのかという理由が分からない。今度の改正案では、事務所は一個所ということになるわけですね。雇う人数は制限されていないけれど、場所的には常に税理士先生のいる場所で事務所が営まれることになるわけで、監督し、あるいは責任を負うことに十分なはずでありまして、そういう点でこの監督をしなければならないという規定を置くことによって、この規程に違反した場合には一般的懲戒処分ですから、威嚇的な感じを持つのではないか。

政府委員:

一人の税理士がどこまで目を通せるかという実態論があります。しかも代理関係で税理士が自分の責任でやる立場なんですね。特に税の場合についてはその税理士として十分な監督をして欲しいというのは、依頼者からの要請であろうと思います。また、いろいろな非違事件が起きています。内容としては、にせ税理士が件数として一番多い。なかには使用人が贈賄に係わっておるとか、脱税相談に係わったものもあるわけです。使用人が非違事件を起こさないようにしてほしいというのは、我々の立場でもありますが、納税者からの当然の要請でもあろうと思います。

税理士はこのように事務所の設置及び使用人等に対する監督義務の規定を踏まえて税理士業務を適正に執行することを求められているが、これらの規定が審議されてから40年近い時が経過した現在、ICT、AI等を含めた環境の変化は大きなものがある。働き方改革が叫ばれているなか、勤務時間、勤務場所等の勤務形態もSOHO、在宅勤務等多様な選択肢が考えられるのではないか。
税理士法人には支店の設置が認められている。個人事務所の支所は検討に値しないのか。
モバイル機器により、いつでもどこでも業務を行なえる状況が実現した今、監督義務の具 体的な指針が必要なのではないか。

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