「論」税理士試験制度の改革を ―税理士を目指す若者を増やすために―

(税界展望 第526号)2017年(平成29年)10月13日

税理士受験者数が減っている


税理士試験を受験する人が年々減少している。国税庁ホームページで公表された税理士試験の科目別の受験者数を合計した延受験者数を確認すると、平成24年度(第62回)は計70,805人であったが、平成28年度(第66回)は計49,245人であり、この5年間で約30%の減少となっている。平成29年度(第67回)については、まだ合格発表が行われていないため詳細は不明であるが、既に判明している受験申込者数では、前年比で約6%、人数にして約2,800人の減少となっている。

税理士試験の受験者数が減少した一つの要因は「簿記・会計」を学ぶ若者が減少していることである。このことは数年前、大学入試センター試験で数学の試験時間に実施されている科目「簿記・会計」からの出題が、受験者数がきわめて少ないことから過去には廃止を含めて検討するとされたことからもうかがえる。廃止を検討するとはされたが、平成29年度に至るまで、大学入試センター試験においては、「簿記・会計」からの出題は従来通り行われている。ただ受験者数は全国規模でも千数百人に止まっている。

税理士試験制度の問題点


税理士試験制度そのものについては、何か問題点はないのだろうか。

まず、受験資格について。国税庁ホームページでは「税理士試験に関するQ&A」に受験資格について掲載されている。その中には「大学3年次以上の学生で法律学又は経済学に属する科目を含め62単位以上を取得した者」という要件がある。ということは大学1・2年生から税理士試験を受けることはできない。同様に専修学校の専門課程においても「修業年限が2年以上かつ課程の修了に必要な総授業時数が1,700時間以上に限る」という要件がある。いずれも年齢からして20歳を過ぎないと受験資格はない。

税理士試験受験者数が減少している昨今、税理士を目指す若者にもっと門戸を開くべきであるという観点からすれば、これら受験資格を緩和して、大学1年生から受験資格を与える若しくは専修学校の専門課程の修業当初から税理士試験を受験できるという制度に改めてみてはどうだろうか。

なお、この点については、平成29年1月19日の東京税理士会支部長会において、又、翌1月20日の同理事会において報告された「税理士試験受験者数減少に対するアンケート(予備調査結果概要)」でも指摘されている。 次に、試験の結果公表について。試験結果は12月中旬頃に公表され、各受験者の自宅宛にも通知される。その通知の内容は合格であれば「合格」の事実が、不合格であればAランクからB・C・Dまで、自分の得点が合格ラインに対しどの程度足りなかったのかがわかるようになっている。

但し、受けた試験が、どの部分の問題が正しく解答できなかったのか、どの部分に配点があったのか、自分の得点がずばり何点であったのかはその通知からはわからない。もちろんその詳細を国税庁に個別に問い合わせることもできない。これではある程度できたと思っていても不合格の通知を受けた時は、その結果をそのまま受け入れる他なく、合格できなかった原因について自己分析もできないまま、翌年の試験に向けて気持ちを立て直さなければならない。このような経験をした人は多いはずである。

試験実施後に採点基準等の公表を


税理士法第7条に「税理士試験において試験科目のうち一部の科目について政令で定める基準以上の成績を得た者に対しては、その申請により、その後に行われる税理士試験において当該科目の試験を免除する」「政令で定める基準は、満点の60%とする」とされている。

ところが、先に述べたように、税理士試験はその採点基準や模範解答は一切公表されない。代わりに「出題のポイント」というものが科目別に公表されている。合否を含め、受験者にとって納得のできる情報開示がされていない。

たとえば司法試験では、「司法試験における採点及び成績評価等の実施方法・基準について」と題して、細かい採点基準を公表している。これと同様の採点基準は司法書士試験や公認会計士試験でも採用されているという。また、司法書士試験や公認会計士試験では、受験者が自らの答案を開示請求することが可能であり、複数の受験者が自らの答案を他者のそれと比較検討することもできる。

一方、税理士試験では、このような細かい採点・配点基準の公表はこれまで行われておらず、提出した答案の開示請求もできない。こうした状況が受験者の税理士試験に対する不信感につながり、結果として受験者数減少の一因となっている。

こうした税理士試験制度の改革こそ、今後税理士を志す人が増加に転じる一助となる。

ホームページの更なる充実を


最後に、税理士の業務がどのように紹介されているかについて、日本税理士会連合会のホームページを見ると、「税理士とは」「税理士制度」「税理士を目指す」といった一般的な内容や、「税についての相談」といった納税者向けの情報等が主な内容となっている。もちろん税理士の業務を紹介する学生向けパンフレットや動画の紹介もあるが、若い人を引き付けるという面ではまだまだ内容が乏しいように感じる。

公認会計士のホームページはどうか。日本公認会計士協会のホームページは今年リニューアルが行われたようであるが、メインページを見るとメニューは多岐にわたっている。公認会計士制度や仕事の紹介、最近の業界の動向、女性会計士の活躍、パンフレットによる若い世代へのアピール等、若い人を引き付けるには十分な内容を備えているように感じる。公認会計士による中小企業支援についても紹介されている。下記にURLを紹介しているので是非比較して頂きたい。

国税庁のホームページ 
https://www.nta.go.jp/

日本税理士会連合会ホームページ
 http://www.nichizeiren.or.jp/

東京税理士会ホームページ
 http://www.tokyozeirishikai.or.jp/

日本公認会計士協会ホームページ
 http://www.hp.jicpa.or.jp/

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