東日本大震災の復興費用に増税が画策されている現状において、事業仕分けで凍結されたはずの埼玉県朝霞市の国家公務員宿舎(850戸、105億円)建築が着工された。だが社会の厳しい批判を浴びて、建築は5年間凍結されることになった。5年後には建築を再開するということだろう。国家公務員数平成18年度末94万5千人、国家公務員宿舎戸数は平成17年度末23万5千戸になっている。
宿舎の必要性の有無の問題のほかに、使用料の妥当性の問題がある。入居基準及び使用料基準は、国家公務員宿舎法、同施行令、同施行規則に規定がある。
宿舎には、公邸(無料)、無料宿舎、有料宿舎がある(法3、10、12、13)。宿舎の面積規格は、abcdeの5段階にランク付けされている(施行規則6)。
貸与基準は、職制等級に応じた宿舎ランクの物件が貸与される(施行規則11)。つまり、上級職になるほど立派な宿舎に、さらに無料宿舎、無料の公邸に入居できるのである。
使用料は、標準的な建設費用の償却額、修繕費、地代、火災保険料の金額を基礎として居住条件等を加味して決定することとし、算定方法は施行令に委任している(法15)。
その結果、港区南青山5丁目宿舎(竣工平成11年、3LDK75㎡、賃料67千円、車庫16千円、管理費なし)、目黒区東山2丁目宿舎(竣工平成4年、3DK65㎡、賃料36千円、駐車場7千円、管理費なし)になっているようだ(インターネット)。敷金、更新料はもちろんない。この使用料で課税するべき経済的利益がないのであれば、所得税基本通達の規定は所得税法違反の疑いが濃い。
低額賃料の経済的利益について、平成15年に長妻 昭衆議院議員、平成16年に浅尾慶一郎参議院議員が質問主意書(国会法第74条)を提出して小泉内閣が書面答弁している。
答弁書によると、所得税法基本通達により課税すべき経済的利益はないとしている。
答弁書も認めているように、所得税法第36条、同法施行令第84条の2の規定により、「その資産の利用につき通常支払うべき使用料その他その利用の対価に相当する額(その利用者がその利用の対価として支出する金額があるときは、これを控除した額)」を給与収入の金額に加算しなければならない
。
「通常支払うべき使用料」の算定であるが、巷間の考えは民間住宅の賃料である。だが、民間賃料相当額を個別に算定することは困難であるので、基本通達36-40に規定するような方法で算定する方法も合理性がないとはいえない。
公務員の「通常の賃料の額」は、役職及び貸与面積に関係なく常に小規模住宅等に係る賃貸料の額(基本通達36-41)が適用される(同36-45カッコ書き)。
役員に対する賃貸料の経済的利益の有無の判定は、貸与しているすべての役員に係る金額のプール計算が認められている(基本通達36-44)が、役員貸与と使用人貸与を合算したプール計算はできない。従業員への貸与をグループ計算できるかどうかは通達に規定がない。
答弁書は、グループ計算で判定して課税すべき経済的利益はないとしている。また、答弁書は「使用料の額がこの計算式により算定した額の50パーセント相当額以上であるときは、・・・・経済的利益はない」と基本通達で定めているとしている。だが、50%基準は、借上げ住宅の賃料の50%が計算式の金額を超える場合は借上げ賃料の50%相当額を通常の賃貸料にするということであって(基本通達36-40カッコ書き)、計算式の50%を通常の賃貸料にするというのではない。国税庁を傘下にしている内閣が書面答弁で通達の解釈を間違えるはずはないので、故意による虚偽答弁と思われる。
国会は、所得税基本通達の規定が所得税法第36条に照らして合法であるかどうかを審議しなければならないのであって、通達に反していないから(実際は上述のとおり解釈を間違えている)問題がないとするのは問題である。国会は、通達の規定が適法・適正であるかどうかをも審議しなければならない。
また、プール計算は、国民が23万戸すべてを検証することは不可能であること及び経済的利益を受けるのはグループではなくて各個人であるので廃止するべきである。さすれば、各個人ごとに経済的利益の検証と適正・公平な課税が可能になる。
国会議員、地方議員、国家公務員、地方公務員の宿舎の経済的利益に対して適正な課税がなされるならば、所得税及び住民税がかなりの増収になるだけでなくて、国民の不公平感の緩和になるであろう。
税理士会は、公務員宿舎が国民の耳目を集めている今、税の専門家の社会的責任として、宿舎の使用料算定方法を策定して国税庁に建議し、そのことを国民に広報するべきである。






