「論」中小零細事業者は消費増税に耐えられるのか!

(税界展望 第532号)2018年(平成30年)4月11日

1.税理士会の意見

東京税理士会から会報(東京税理界NO.735)とともに「平成31年度税制及び税務行政の改正に関する意見書」が届きました。重要な改正要望事項として消費税について「消費税の軽減税率に反対する」と「適格性請求書等保存方式の導入に反対する」が記載されていますが、消費増税については触れていません。消費増税については反対することなく、容認しています。これは日本税理士会連合会も同じく昨年6月22日に開催された理事会で決定した平成30年度税制に関する建議書では消費税については税率引上げを容認し、「今後の税制改正についての基本的な考え方」として「消費税は我が国の基幹税であり、これからの我が国の社会保障4経費(年金、医療、介護、子育て)を支えるのは、消費税である。消費税率の引上げによる国内消費の減速懸念の問題については慎重な対策が必要であるが、消費税率は予定どおり引き上げられることが望ましい。」としています。しかし前回の消費税引上げが個人消費に与えた影響や税率引上げによる物価上昇による影響は小さくありません。消費税率を引上げなければ中小零細事業者が負担する軽減税率(複数税率)制度の導入は必要ありません。

2.経済財政諮問会議の課題

先の総選挙において連立与党の圧勝を受けて、消費増税は民意を得たと言うことができるというかもしれません。しかし改めて消費増税についてはたして中小零細事業者は負担に耐えられるのでしょうか。平成30年2月20日の経済財政諮問会議の今年前半の主な課題・取組について、「来年10月の消費税率引上げの影響に対する予算を含めた万全の対応」を挙げています。首相は「平成26年の消費税率引き上げ時の経験に鑑み、欧州の事例にも学びつつ消費税率引き上げによる駆け込み需要と反動減といった経済の振れをコントロール、需要変動を平等化する具体策を政府一丸となって検討する必要がある。」と述べています。消費税率引き上げに伴う経済の落ち込みはどの程度になり、また政策的にどう対応するか課題となって、消費増税についての議論は、消費税率の引き上げの前に価格を引き上げるべきという意見が出ています。しかし税理士、税理士法人の主な顧客である中小零細事業者は自社の都合で価格を引き上げることができる商品、製品やサービスを通常は持ち合わせていません。

3.消費税の導入の歴史

消費税の歴史を再確認してみると、日本では消費税は社会保障の捻出や財政再建のためなどと言われていますが、消費税(付加価値税)はフランス政府が1954年に国内の輸出企業にリベート(還付金)を渡すために編み出した税制で、GATT(関税貿易一般協定・貿易WTOの前身)の例外規定として認めさせてきた歴史を持ちます。先月(第531号税界展望「論」の通り、先進諸国で消費税を採用していないのは米国だけで、米国には小売売上税はありますが、これは州税で、消費税とは全く異なる税制です。消費税には輸出企業へのリベート機能はありますが、小売売上税にはありません。日本の消費税が輸出企業へのリベートであることは導入以降の歴史が証明しています。消費増税は消費を後退させ中小零細事業者の負担は重たくなります。

4.消費増税は凍結に

経済財政諮問会議では「前回の消費税引上げが個人消費に与えた影響は、税率引上げによる物価上昇を通じた影響は2兆円台半ば程度、駆込み需要の反動による下押しは3兆円程度(平成27年度経済財政白書)。また、デフレマインドが残る中での名目賃金の伸び 悩みも消費を下押しした。物価上昇に伴う実質所得減の影響、税率引上げ前後に生じる駆込み需要とその反動に留意する必要がある」としています。

一説では会社が設立されてから10年後の生存率が6.3%といわれています。消費の停滞を脱し切れずにいるあいだは消費税率10%への引上げを凍結し、税率をもとの5%に戻すぐらいの英断が国民の消費を増やし中小零細事業者に元気を与え、経済は活性化するのではないでしょうか。

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