「論」消費税は貿易自由化の妨げになる?

(税界展望 第531号)2018年(平成30年)3月19日

トランプ大統領が、鉄鋼とアルミニュウムの輸入に新たな関税をかけることを決めた。鉄鋼は25%、アルミニュウムは10%の追加関税がかけられる。この一方的な輸入制限の発動について、自由貿易体制を危うくすると他国から批判が相次いでいる。

しかし、米国と日本の税制でこの問題を考えると、日本の消費税の値上げは、米国にとって関税を上げるのと同様に感じられると予想される。

消費税値上げ時には、いま日本が米国に向かって行っている非難は、同じように米国から日本に向かう。当然トランプ大統領は消費税アップに反対する。こう考えると日本の消費税率10%引き上げを阻止できるのはトランプ大統領だけではないか?

10%の消費税アップが止まれば、われわれ皆が反対している税率アップに伴う軽減税率導入、その後のインボイス制度導入も行われなくなる。

私はこの一点のみをトランプ大統領に期待する。

 

1.日本との自動車貿易が不公平?

トランプ米大統領が就任当初、日本との自動車貿易が不公平だと批判し、貿易赤字を解消するために二国間の協議に乗り出すことを示唆した。

この言動に対し日本側は、乗用車の輸出関税は、米国の2.5%に対して日本はゼロだ。トランプ氏の時代錯誤の認識に耳を疑う、との見解である。

しかし、トランプ氏の発言は、日本と米国との税体系の違いに言及しているのだとしたら筋が通ってくる。

 

2.アメリカには消費税はない?

付加価値税・消費税は今や世界の約140カ国で採用されている税制度である。ただし、その中に米国は含まれていない。なぜ米国だけが採用を見送り続けているかを考えるポイントとして、付加価値税に組み込まれた輸出企業への還付金の存在がある。

消費税の大原則として、課税をするのは消費をした土地でなくてはいけない、という「仕向地原則」が存在する。そして、輸出企業は価格に転嫁できない(輸出売上にゼロ税率をかけた額、もちろんゼロ)唯一の例外として取り扱われ、仕入れにかかった税金を還付してもらえる。

このように、消費税については国境調整として、輸入品には課税、輸出品には還付金(リベート)は当然の認識になっている。

米国で政治家やメディアが消費税について語るときは誰もが「消費税?ああ、輸出企業へのリベート(還付)がある税金ね」というくらい認知されており、「消費税導入をしたって、結局は関税引き上げの競争になってしまうだけだからナンセンス。」という意見につながっている。(文春新書「アメリカは日本の消費税を許さない」岩本沙弓著 参照)

 

3.5兆円強が巨大輸出企業に還付され続けている

8%現在で還付金が1番多いのはトヨタ自動車で3,231億円、2位の日産自動車には1,190億円、3位のマツダには662億円、4位の本田技研工業には619億円と自動車産業が続く。6位の三菱自動車にも512億円の還付金がある。2014年4月から税率が5%から8%に上がったため、これらの大企業の還付金額は大幅に増加した。国税庁の発表によると2016年4月から2017年3月期における消費税及び地方消費税の還付金額は5兆4,322億円となっている。

輸出大企業は消費税を納税しないばかりか5兆円を超える還付金をもらい続けている。そして還付金の原資はトヨタなどの輸出企業ではなく、下請け先や仕入先が税務署に納付した消費税である。

 

4.消費税率引き上げは非関税障壁引き上げ?

米国は消費税を導入していないので、日本の100万円の車を米国で売るときは、100万円と関税2.5%で102万5千円である。米国の100万円の車を日本で売るときは、関税ゼロといっても消費税がかかり108万である。そのうえ、日本の100万の車を作った輸出企業には8%の還付があるので米国よりもずいぶん原価は安くなる。

日本の消費税が8%から10%に引き上げられれば、日本に入ってくる輸出品の価格は全て2%上昇する。米国からすれば、自国製品が2%値上がりする。その上、日本の輸出企業に対して還付金が2%多く支払われる。

消費税率引き上げは非関税障壁引き上げになり、米国製品は売れなくなる。

 

5.今後予想される展開

トランプ大統領の鉄鋼とアルミニュウムに輸入関税を課すことに際し、各国は世界貿易機関(WTO)に提訴できる。

しかし振り返ってみると、GATTは、輸出企業に対して補助金を出すことを禁じており、その盲点を突くようにできたのが消費税である。それゆえ、米国は消費税を不公平税制として採用していない。消費税がある国はトランプ大統領に意見を言えないのではないか。

加えて言うなら、輸出の低迷を保護主義によって解決しようとするトランプ大統領に、非関税障壁になって例外的に認められている消費税をWTOから取り除くほうが現実的で米国の正義を貫く方法では、と訴えたい。

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