「論」マイナンバー制度の検証

(税界展望 第527号)2017年(平成29年)11月8日

Ⅰ 個人情報委員会報告


平成29年11月1日、個人情報保護委員会(日本の行政機関の一つ)は、「平成29 年度上半期(平成29年4月1日~9月30日)における個人情報保護委員会の活動実績について」を公表した。その内容について、以下の通りいくつかピックアップした。

1.漏えい等事案に関する報告の受付状況等について

委員会に直接報告された漏えい等事案は290件であった。これらの多くは、書類や電子メールの誤送付であり、その他の発生原因としては、紛失、インターネット等のネットワークを経由した不正アクセス等であった。

2.特定個人情報の漏えい事案等に関する報告の受付状況等について

特定個人情報の漏えい事案等の報告の受付273件のうち、重大な事態に該当するものは、①地方公共団体において、約250人分の給与支払報告書(マイナンバーを含む。)を紛失した事案、②民間事業者において、プログラムミスにより約800人分のマイナンバーカード等の本人確認書類の画像データを削除した事案、③民間事業者において、火災により約 260人分のマイナンバーが記載された書類を滅失した事案である。また、受け付けた漏えい事案等の報告のうち主なものは、特別徴収税額決定通知書の誤送付等(152件)によるものである。

以上の報告により、マイナンバーを含む特定個人情報の漏洩件数が昨年同時期に比べて大幅に増加していることが明らかになった。平成29年4月1日~9月30日の期間にて届け出のあったマイナンバーを含む特定個人情報の漏洩は、224機関、273件にのぼり、昨年同時期の、49機関、66件と比較して約4倍になっている。給与支払報告書の紛失や特別徴収決定通知書の誤送付152件についてやはりあるなと感じた。

この報告からマイナンバー制度に伴い、事業者の個人情報管理コストは増加の一途をたどるばかりだが、一度漏洩したとなれば、顧客への被害や事業者自身の信用が落ちるなど非常におおきなダメージとなるため、事業者にはさらなる、誤送付防止、不正アクセス対策等管理体制強化をはかることが必要になる。

Ⅱ マイナンバー制度までの経緯


マイナンバー制度制定の起源は少額貯蓄等利用者カード(グリーンカード)の導入にある。1980年代に導入が計画された納税者番号を割り振って利子・配当所得といった小額資産性所得に対する日本の総合課税制度において、本人確認のために納税者番号を記載したカードのことで、マイナンバーカードと同じような手法である。1980年3月には、グリーンカード制度の導入が制定されたが、郵政省、郵政族議員、金融業界、それに自治労などから反対の声があがり、1985年度に施行されることなく廃止された。

国民を番号で管理し、税金を補足するという、政府の連綿とした思いがある。その後グリーンカード制度廃止の反省を踏まえ政府は住民基本台帳カード制度の導入を検討した。この機会に住基ネットを構築しておいて、ゆくゆくは納税者番号とつなぎ、全国民の所得と納税額を把握しようという思惑は当然あったのであろう。

住民基本台帳カードの交付は、2003年(平成15年)8月25日に開始され2015年(平成27年)12月限りで発行を終了した。発行された住基カードは累計920万枚だが、紛失などを除く有効発行数は710万枚で、カードを持っているのは全国民のわずか5.5%にすぎない。衆議院議員河村たかし君提出住民基本台帳ネットワークシステムの「費用対効果」に関する質問に対する答弁書(平成19年2月20日)によると、構築費用に380億年間経常費用は190億と記されている。合算すると、13年間で2,850億円になるのかな?

しかし実際には、当時全国で約3,000強あった各地方自治体でも、それぞれ1,000万〜2,000万円ほどの初期費用と、年間数百万円の維持費がかかっている。そうした費用を合計すれば、これまでに日本中で1兆円近い税金が、住基ネットに消えていったのである。そもそも、『利便性』とは何なのか『マイナンバーがあればコンビニで住民票が取れる』と言うが、それは住基ネットでもできた。

Ⅲ マイナンバー制度の今後


時事通信は、導入コストについて「システム構築費などの初期費用2,700億円に加え、運用開始後も維持費などで年300億円程度が必要になる見通し」(29/5/2付)と報じている。更にマイナンバーの製造・発行等に283億円の費用も追加されている。マイナンバー制度の導入から、平成30年1月で丸2年になる。

現在、個人番号は社会保障や税の手続きで提示を求められる。マイナンバーカードの交付枚数等(平成29年3月8日現在)の公表があった本年3月8日現在で、番号カードの取得は1,071万枚、全国で人口に対する交付枚数率はわずか8.4%であった。管理システムの不具合もあって国内人口の8.4%程度と伸び悩んでおり、政府はカードの利便性向上などでマイナンバー制度の浸透を図っているが普及率の向上という成果は得られていない。12年間で5.5%の普及率の住基カードよりは1年間で8.4%の普及率のマイナンバーカードのほうが普及に対する成果があったのかもしれないが今後爆発的な普及はあまり望めそうもない。

制度の根底にある国民総背番号制による監視国家(古いかな)を国民は理解しているのか疑問であるが、どうも国民は利便性について関心がないようである。以前あった、電子証明書等特別控除のような、より多くのインセンティブがなければ普及は難しいのではないか。まあ、国民に番号を附番することが出来たのでカードの普及率の向上は必要ないのかもしれないですね。

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